プーチン閣下来日記念読書

今度は都内の中学校で原発事故から避難して来た生徒へ対する
いじめである。

「避難者であることをばらすぞ」

中学生とはいえ卑劣だ。言われた子はどんなにつらかったろうと
思うよ。

先日は他の学校であろうことか先生が避難者である生徒に対して
名前に「菌」をつけて呼んだなんてニュースもあった。

どいつもこいつも、どうかしてるよ本当に。人を傷つけて楽しいですか?

プーチンの実像 証言で暴く「皇帝(ツアーリ)の素顔』(朝日新聞
国際 報道部/駒木明義/吉田美智子/梅原季哉 朝日新聞出版)
読了。

ネット上には真偽のほどが定かではないプーチン伝説が溢れている。
例え9割がデマだとしても「プーチンならありえる」と納得してしまうこ
ともしばしばだ。

ただ、本書はそんなプーチン伝説ではなくとっても真面目な評伝だ。
実際にプーチンを知る人々の証言を集め、朝日新聞朝刊に連載さ
れた記事に大幅加筆して書籍化された。

連載中も毎回楽しみに読んでいたのだが、こうして1冊の本にまとまる
とロシア大統領プーチンという人はとことん興味深い人物だ。

KGBの元スパイ。スパイ好きの私にはこれだけでも興味をそそる存在
なのだが、政治経験ゼロで大統領にまでなってしまったのだもの。

KGB時代は決して優秀なスパイだったのではない。派遣されていたの
旧東ドイツドレスデン。そこで東ドイツの崩壊に立ち会った。

故郷サンクトペテルブルクへ戻り、サプチャーク市長の下で第一副首相
を務めていた時にソ連が崩壊した。このふたつの国の崩壊に立ち会った
ことが大きな影響を与えたのかもしれない。

ただ、KGB時代、共産主義には批判的であり、サンクトペテルブルク時代
には西側の銀行などを誘致し、市場開放には積極的だった。

夢見たのは西欧型の自由経済。だが、国家が転覆するのだけは我慢が
ならない。そんなところか。だから、プーチンがやろうとしているのは決して
ソ連の復活ではなく、あくまでも「強いロシア」なのだ。

それは「世界一のお金持ち」と言われたロマノフ朝への回帰と見るのは
蝶々うがった見方かもしれないけれど、プーチンは「大統領」と呼ぶより
「皇帝(ツァーリ)」と呼ぶ方がふさわしいような気がする。実際、私は
普段「閣下」と呼んでるしね。

それにしても本書で証言している人たちのプーチンに対する意見が
極端に割れているのはおもしろい。とことん批判的な人、とことん好意的
な人ってなっている。

これもどの視点で見るかで変わって来るのではないかな。アメリカ寄りの
視点だと「独裁者、悪魔」になるのだろうし、ロシア視点では「救世主であ
り、頼りになる大統領」だろうしね。未だ80%という高支持率を誇っている
のだから。尚、ロシア・メディアが骨抜きにされている件は問題だけど。

元々が新聞記事なので一般的なプーチン入門というところだね。これまで
プーチン関連の作品を読んでいる人には物足りないかもだけれど、彼
のこれまでの足跡を追うにはいい。

尚、何故プーチン森喜朗がお気に入りなのか謎だったのだけれど、
森喜朗のお父様が日本とロシアの友好に尽力し、ロシアに分骨され
ているとのエピソードが閣下のお気に召したらしい。一緒にお墓参りを
している写真が本書にも掲載されていた。

森喜朗は好きではないが、プーチンに率直にものを言えるところは見直し
たわ。そういえば、以前、サンクトペテルブルクにアイスホッケーの世界
選手権を見に行った時、VIP席にプーチンと並んで森喜朗が座っていた。

「こら〜、森〜。その席、私と替われ」と叫んでいたことは内緒である。