革命家になるまでのフィデル

お客「sashaさんってさ、いつも笑ってるよね」
私「笑ってごかませないかと思って」
お客「本当に?人の不幸を笑ってるんじゃないの?」
私「そんなことないですよ〜」
お客「ほら、またそうやって笑う。まぁ、ぶっきらぼうに答えられる
   よりいいけどね。いるでしょ、そういう人。じゃ、またね〜」

派遣先でのお客様との会話。忙しい時ほど、お客に愛想を振り撒いて
いる私であった。あ〜、今日も忙しかった。

『少年フィデル』(フィデル・カストロ TWJ books)読了。

『戦争報道とアメリカ』(柴山哲也 PHP新書)を読み終わる前に次に
読む本は決まっていたのだが、フィデル・カストロの訃報に接して
急遽、読書予定を変更した。

モンタガ襲撃以降のカストロについてはいくつかの作品を読んで知って
いたが、それ以前のカストロについては知らない。

カストロ本人がプライベートについてはあまり語っていないのが原因で
もあるのだが、本書はカストロへのインタビューや本人の演説で革命家
以前のカストロの姿を描いている。

いや〜、びっくりしたわ。モンタガ襲撃の時に死んでいてもおかしくない
状況だったのだけれど、その前にも何度か命を落としていたかもという
状況があったんだな。

特にコロンビアを訪れていた時に発生した民衆蜂起。混乱はキューバ
のせいだとされ、相当に危険な状況なのに宿を提供してくれた人と口論
して夜間外出禁止令が出ているのに宿から放り出されちゃってる。

インタビューで本人は「若気の至り」と語っているけれど、この時、キュー
バ領事館が保護してくれなかったらどうなっていたことか。

カストロは非常に強い「運」がついて回っているのではないかと感じる。
だって、ギネス記録だと言われるアメリカ・CIAによる600回を超える
暗殺計画のどれもが成功していないのだもの。

強運の持ち主としか言いようがないんじゃないだろうか。

他にも新興地主であった父のこと、無学だけれど熱心なキリスト教
であった母のこと、幼いころから親元を離れて通った学校のことなど。
演説と一緒で「語り出したら止まらない」感じでインタビューに答えて
いる。

インタビュアーは楽だろうな。一言聞いたら、百倍くらいの答えが返って
くるんだから。

モンカダ襲撃で投獄された時に書いた手紙が巻末に収録されている
が、この手紙にもカストロが革命家として何をどう考えているのかが
反映されおり参考になる。特に没収された2冊の本について、刑務所
当局に返却を求める手紙が理路整然としていて、カストロという人は
地頭がいいんだなと思った。

学生時代もスポーツや探検に明け暮れていたけれど、一夜漬けでも
いい成績が取れたというのだから。

暗殺したいほどアメリカから憎まれようと、亡命キューバ人たちにその
死が祝われようと、やっぱりカストロは魅力的な人物であり、私の英雄
のひとりでもある。

摘んでおかないで、もっと早く読めばよかった。でも、まだキューバ
カストロ関連の作品は積読の山にあるんだけど。