自分だけが英雄だと思っている?

「鑑みる」。文章ではたまに使うけれど、話し言葉ではほとんど使った
ことがない。でも、派遣先にこの「鑑みる」を多用するスタッフがいる。

話の流れから思うに、どうも「考える」と同義語で使っているようだ。

えっと…ちょっと違うと思います。「鑑みる」を使うのであれば、前に
つくのは「を」ではなく、「に」なんだけどな。いつか突っ込んであげよう。

そう、私は底意地が悪いです。自慢できませんが…。

住友銀行秘史』(國重惇史 講談社)読了。

住友銀行の秘史だって言うから。イトマン事件の真相だって謳って
いるから。だから読んだんだけどね。

本書は「読み物」ではなく、「資料」だ。

イトマン事件の渦中で、住友側で情報収集をし、大蔵省やマスコミ
宛てに内部告発文書を送った著者が、騒動の中でこまめに記録した
メモとその解説、時々の新聞や週刊誌の記事が時系列で掲載されて
いるだけ。

後に特別背任で起訴されたイトマン社長や伊藤寿永光、許永中
住友銀行の役員等、実名が多く記載されているので生々しさはある
ものの、要は銀行だけではなくどの会社にもある権力争いと保身
のオンパレード。

そんな住友銀行上層部にあって著者は「自分はそんな人たちとは
スタンスが違うとの主張を死、「住友銀行を守る為に裏で動いたのだ」と
言う。これを自己顕示欲って言ったら言い過ぎ?

イトマン事件はバブル期という異常な状況の中で起きた。このバブル期
に関して、住友銀行を含めて銀行側は一切、罪はないのだろうかと思う。
だって、バブルを煽った責任は銀行にもあるんじゃないかな。

イトマンを食い物にしたと著者が指摘する伊藤寿永光をイトマンに紹介
したのは住友銀行の人間ではなかったか。そのイトマンにも住友側から
の出向社員が多くいたのではなかったかな。

私はイトマン事件の前章として平和相互銀行の住友への吸収合併が
あったと思っていたのだが、本書ではこの部分は軽く流している感じ。

当時、著者の周辺にいて、未だ存命の方のいるのになんでこれ、出版
したんだろうなぁ。その意図が分からん。

せめて著者のメモを元にプロの作家さんに経済小説に仕立ててもらった
方がよかったのかもしれない。

尚、イトマン事件当時、住友銀行の常務だった西川善文氏の回顧録
の方が面白そうだ。機会があったら読んでみよう。