それでも三枚舌はいけないと思うの

派遣先は年中無休なので日曜日も営業している。通常、土曜・
日曜は公休にしてもらっているのだが、今月は長期欠勤者が
いるので今日と来週は日曜日が出勤日だ。

やっぱり暇なんだわ、日曜日は。貧乏性なので暇疲れしちゃう。
それでも今日は新たな資料が配られたので読む物があって少し
は暇つぶしが出来たけどね。話し相手もいたし。

問題は来週だ。さて、8時間、何をして過ごそう。

『【中東大混迷を解く】サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(池内恵
 新潮選書)読了。

オスマン帝国なんてぶっ潰して、あいつらの領土を山分けしよう
ぜ」とイギリスが持ち掛けて、「そりゃいい考えですな、旦那」と
フランスが合意したのが1916年のサイクス=ピコ協定である。

その協定の詳細な解説かと思いきや違った。私も現在の中東の
混迷を考える時、この協定を頭に置いているのだが、著者はこの
協定だけが本当に中央混迷の根源なのだろうかと疑問を提示し、
中東の歴史や地政学、複雑に交錯した民族模様や国家間の関係
を解説した書だった。

サイクス=ピコ協定単独ではなく、セーブル条約・ローザンヌ条約
の3つをセットとして考えなければならぬと著者は説く。もうここで
躓きましたよ。私はセブール条約とローザンヌ条約を調べるところ
から始めなければならなかったもの。

確かにサイクス=ピコ協定がすべての根源だとするには、この協定
内容がすべて守らていなければならない。でも、それ自体が無理。
だって、子供が考えても「それは無理だろう」っていう約束ばかり
しているのだも、イギリスは。

サイクス=ピコ協定の前年、「アラブ人の国を作るのを認めてやる
からこっちの味方になってトルコと戦え」とメッカの太守であった
フサイン家との約束である、フサイン=マクマホン協定があるで
しょう。

そうしてサイクス=ピコ協定の翌年には「ちっ、戦争にお金がかかっ
て財政がピーンチ。あ、ちょっとお金貸してよ。貸してくれたらパレス
チナに住んていいよ」と、ユダヤ人コミュニティのリーダー的存在で
あったロスチャイルド家と約束したバルフォア宣言があるでしょう。

「うわ、どれも守れないわ。しゃあない。新しい条約作って線引きしな
おそう」で、セーブル条約とローザンヌ条約が出来たのね。って、こん
な理解でいいのか、私は。

イギリスにしてみたら自分たちは痛くも痒くもないから、どんな無理な
約束でもしたんだろうけれどね。でも、やっぱりこの三枚舌外交は
問題が多いと思うんだよね。

百年の呪縛は解けるどころか益々混迷を深くしているように思える。
ただ、本書で著者が書いているように難民が流出していることで
少数民族の問題がある程度解決に向かっているという面もある。
本当はあってはいけないことだけれど。

結局は力でしか状況は変えられないのかな。アメリカとロシアの仲介
でシリア内戦の、2度目の停戦合意が取り付けられたのはつい先日。
それなのに、反政府勢力の地域にロシア軍が空爆だよ。

大国の思惑に翻弄されるのは、いつも一般の市民なんだよね。どれ
だけ血が流れて、涙が流れたら和平が訪れるのかな。

読んでいて余計に出口が見えなくなってしまったので、私はやっぱり
イギリスの三枚舌のせいにしたくなったよ。