文脈を読め

ヴェトナム戦争は、報道が報道たりえた戦争だった。後々まで印象に
残る数々の報道写真が発表された。「ナパーム弾の少女」と題された
写真も、そんな報道写真の一枚だ。

アメリカ軍のナパーム弾攻撃の被害を受け負傷した少女は、痛みと
熱さに泣きながら裸で走っている。

この写真が「児童ポルノ」とされた。Facebook上でだ。確かに写ってる
のは少女であり、彼女は裸だ。だが、どこに「ポルノ」の要素があるの
か?

発端はノルウェーの作家の写真投稿だった。Facebookは速攻でこの
写真を削除した。この削除に反発した人々が次々に同じ写真を投稿
したが、Facebookも負けじと削除し続けた。

勿論、ノルウェーの首相の投稿も削除された。この措置に首相は「私
たちが共有する歴史の編集だ」との言葉でFacebookを批判した。

少女、裸。杓子定規で削除したとしか思えないんだが…。キーワード
だけが問題にされてるのか?そういや、以前、某サイトで「禁止ワード」
が設定されていて、文脈も無視して該当する言葉が入った文章は投稿
出来なくなっていたっけ。

投稿ひとつひとつを人がチェックするのが無理だからって、なんでも
自動的に削除できるようにしているからこんなことが起きるんだよな。

結局は検閲なんだものね。まずは考えようではないか。その文章が、
その写真が、何を意図したものであるかを。

レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット』(高史明
 勁草書房)を読み始める。

インターネット空間に溢れる民族差別。それをテーマに、データを集めて
分析した博士論文に加筆した作品。