人がいなくなれば問題も消える

ムッシュかまやつ、肝臓がんかよ…。77歳だから体力が心配だけれ
ど、きっと戻って来てよ〜。ムッシュ〜。

『毒殺 暗殺国家ロシアの真実』(アルカディ・ワクスベルク  柏書房
読了。

2010年10月までウクライナの大統領だったヴィクトル・ユシチェンコ
は、なかなかの男前だった。しかし、2004年の大統領選挙の真っ最
中に原因不明の重病に陥り、次に人々の前に現れた時、その顔色
は青黒く、無数の痘痕に覆われていた。

ロシア連邦保安庁の職員でイギリスに亡命し、祖国ロシアに対して
の反体制活動家となったアレクサンドル・リトビネンコは2006年11月に
ロンドンの寿司屋での会食後、体調不良を訴え病院に収容されたが
手当の甲斐なく死亡した。

ユシチェンコにはダイオキシンが、リトビネンコにはポロニウムが盛られ
ていた。ユシチェンコこそ未遂に終わったものの、一体、誰がどんな
目的でふたりを亡き者にしようとしたのか。

それは勿論、ロシアのプー(以下自粛。くまのプーさんではない)の関与
があったのは疑うべくもない。だって、クレムリンの片隅には、レーニン
の時代からソ連・ロシアの最高権力者に代々受け継がれて来た毒物
研究室があるのだから…というのが本書である。

当然のようにロシア国内では発禁の書。そりゃそうだろうな。ロマノフ朝
が倒れてから、あんな暗殺も、こんな暗殺も、み〜〜んな国家指導者が
やってましたっ!なんて本を、プーチン閣下のロシアが認めるはずがな
い。あ、「プーチン」って書いちゃった…。

文字通り死屍累々。トップが変わろうとも手法は同じ。時の権力に邪魔な
人間は容赦なく殺しちゃう。それも、自然死に見せかけた毒殺という手段
を使って。

リトビネンコがその死の真相を追っていた女性ジャーナリストにしたって、
毒殺を試みたけれど失敗したから射殺になったんだよね。

2013年にイギリスで死亡したロシアの新興財閥の代表格だったボリス・
ベレゾフスキーだって公式発表は自殺とされているが、疑おうと思え
ばいくらでも疑えるもの。だって、ベレゾフスキーはプーチン閣下に失脚
させられて、ロシアを追い出されたようなものだしね。

レーニンが生み、スターリンが育てた恐るべき研究室は、今はプーチン
閣下の手中にある。スターリンほどの無茶はしないだろうけれど、それ
でも怖いわ。

チェチェン独立派の武装勢力が劇場に人質を取って立てこもった事件
でも、人質がいるのに毒ガスを使って犯人を制圧しているんだから。

「目的の為には手段を選ばず」。ロシアの一部は、未だにソ連である。
怖さMAXだけれど、面白かった。