消えない刺青とトラウマ

素敵だなぁ、参議院憲法審査会。自民党から今井絵理子と三原
じゅん子が名を連ねてるよ。

沖縄出身でも沖縄が置かれている現状が分からない今井センセイ、
神武天皇は実在の人物なのでその伝統を反映させた憲法を作らない
といけないとおっしゃる三原センセイ。

だ、大丈夫か、自民党

『13歳のホロコースト 少女が見たアウシュヴィッツ』(エヴァ・ スローニム
 亜紀書房)読了。

少女はチェコスロバキアブラチスラヴァで生まれた。商才を発揮し、
生地屋を繁盛させていた父のおかげで家庭は富裕層に属する。両親に
祖父母、兄と妹たち、叔父や叔母。多くの親族に囲まれた暮らしは、
今思い返せば幸せだったのだろう。

だが、時代はヨーロッパに暗雲が立ち込めていた第2次世界大戦
前夜だ。ナチス・ドイツポーランドに侵攻する半年ほど前。手始め
のようにナチスチェコスロバキを解体し、翌年には反ユダヤ法が
成立した。

少女の名はエヴァ。本書の著者である。内容はタイトル通り。ナチス
絶滅収容所から生還したエヴァの回想録である。

幸せだった頃の思い出は、きっと美しい。だから、本書でも軍靴の響き
が大きくなる以前の家族との思い出は、文章がキラキラとした輝きを
放っているかのように、甘くて温かい。

だが、輝いていた少女時代は終わりを告げる。いや、年齢的にはエヴァ
はまだ少女なのだ。それでも、ナチスユダヤ人排せつ運動は家族を
引き裂いた。

ユダヤ人であることを隠し、妹とふたりで身を隠したエヴァだったが
長くは持たなかった。13歳でアウシュヴィッツに移送された。

労働に適さない子供は容赦なく殺害された収容所で、エヴァは妹と
双子だと勘違いされたことで幸か不幸かヨーゼフ・メンゲレ博士の
人体実験の実験台にされた。

周囲の手助けやエヴァ本人の機転、そしてこのメンゲレ博士による
勘違いが絶滅収容所で生き延びるチャンスを与えてくれた。

戦後、エヴァの家族はひとりの妹を除いて全員が再開を果たすの
だが、家族の間にはそれぞれの体験が異なることによる溝が出来
ていた。お互いが、戦争中の体験を詳細に話し合うことが出来ない
のだ。

家族との再会はきっとエヴァに安心感を与えはしたのだろう。それ
でも消えないものがあった。腕に刻印された収容者としての刺青。
もうひとつは収容所での体験や殺戮の光景を目にしたことによる
トラウマだ。

ホロコーストの生存者も、日本の広島・長崎での被爆体験者同様に
年々少なくなって来てる。生きて、収容所を出られたエヴァの話は
今後も貴重な証言になるであろう。

記憶の曖昧な部分は正直に申告されており、どこまではエヴァ
正しい記憶なのか不明な部分もある。人間の記憶は。、絶対では
ないのだから。

生き延びた者も、生涯背負っている事柄があり、それは消すことが
出来ない。だから、二度とホロコーストのような出来事を引き起こし
てはいけないのだと思う。

勿論、対象はユダヤ人だけではない。自分と所属を異にする者、
誰に対しても…だ。