円山町で逢いましょう

バグダッドでの事件、安否不明と言われていた日本人7人は
昨夜のうちに死亡確認のニュースが流れた。傷ましい事件に
なってしまった。

それにしても今回の事件では「自己責任」という言葉が聞こえて
こないね。ジャーナリスト等が犠牲になると声高に「自己責任」を
叫ぶ人たちの線引きはどこにあるんだろうか。う〜ん…。

『円山町瀬戸際日誌 名画座シネマヴェーラ渋谷の10年』(内藤篤
 羽鳥書店)読了。

昔々、映画のVHSビデオテープは平気で1万円を超える高価格
だった。だから、旧作映画を観るには名画座が欠かせなかった。

作品目当てだけではなく、ライブハウスがはねた後で終電を逃す
とオールナイト上映をしている名画座に潜り込んで夜が明けるの
を待っていたこともある。

インターネットで映画を観ることが出来たりと、ソフト面の多様化で
名画座が次々と姿を消している。そんななか、2006年1月に開館
したのが本書の著者が館主を務めるシネマヴェーラ渋谷である。

実は数えるほどしか行ったことがない。『絶唱』目当てに山口百恵
特集を観に行ったのが初めてだったと記憶する。その後は千葉
真一特集と成田三樹夫特集の時に訪れたくらいだ。

巻末掲載の開館から2015年までの上演番組一覧を見ると、なんで
もっとまめに行かなかったのかと公開する。

だって、サイレントムービーからロマンポルノ(既に死語か)まで、
特集内容によってカバーしている作品の内容が幅広いのだもの。

本書は開館から10年の軌跡が日誌になっているのだが、著者の
映画好きに感服する。まぁ、映画評論家になろうとしてそれが無理
だと感じ、エンターテインメント専門弁護士になり、弁護士と言う
本業の傍ら(?)名画座を開館させてしまうような人だから当たり
前か。

「この作品なら集客が見込める」と思った作品が、著者の思惑とは
異なって客の入りが悪かったり、反対に期待せずに上演した作品
で思いのほか集客が良かったり。上演プログラムを組む側とし
ては「なんでだ?」って現象に悩んでいる。

興味深かったのは上演素材の話だ。映画エッセイだけでは分からな
い映画館側の悩みがこれなんだろうな。旧作ともなれば16ミリや35
ミリのフィルムでの上演なんのだけれど、フィルムの劣化や機材の
問題が起きているんだね。それに権利の問題もある。

私自身、ロードショー館や単館上映館、名画座等、映画館への足が
遠のいているので反省しなくてはいけない。もっと劇場に映画を観に
出かけなくちゃいけないわ。

同じ作品を観るのでも映画館とDVDとでは違うんだものな。なんて
思いつつも、これまで見逃した作品がいくつあることやら。

著者のようにいつまでも映画に対して情熱を燃やせるのはいいね。
経営者としては勿論だけれど、単なる映画ファンとしての作品の感想
も面白かった。