少女の夢は叶うことがない

検察の不起訴が決まったら、早速政治活動再開ですか、甘利センセイ。
睡眠障害はもう完治したのでしょうかね。フンッ。

そして、今日の舛添都知事の会見である。あれ、「調査」ではなく単なる
弁護士による「判断」だよね。別荘を売却するとか、不適切と言われた
支出に関しては慈善団体に寄付するとか。

甘利センセイにしても舛添都知事にしても茶番としか言いようがないね。

『青い眼がほしい』(トニ・モリスン ハヤカワepi文庫)読了。

黒人差別を描いた作品は何作か読んで来た。概ね、白人による
黒人差別を描き、壮絶なリンチの様子や家畜以下の扱いをされ
た時代と、公民権運動で権利を勝ち取る時代を綴った作品が
多かった。

本書も黒人差別を扱った作品である。しかし、これまで読んで来た
作品と趣を異にしている。白人から差別される黒人同士であっても、
より貧しき者、より弱い者が、同じ肌の色を持った人々から差別さ
れるのだ。

本書の主な語り手は黒人少女のクローディア。クローディアには理解
出来ないことがある。みなが欲しがる「可愛い人形」は、何故青い眼を
して、黄色の髪をしているのか。

美の基準。それは白人社会の価値観に他ならない。クローディアは
黒人の少女。だから、人形に自分を投影することが出来ないし、
可愛がることも出来ない。

しかし、クローディアの友人ピコーラは青い眼に憧れていた。「誰より
も青い眼を下さい」とピコーラは願う。そうすれば、誰も私をないがし
ろにしたり、苛めたりしないだろうから。

そんなピコーラに悲劇が訪れる。実父による暴行の末、ピコーラは
妊娠する。えぐられるように傷ついた心はますます浮遊する。

「もし自分に白い肌やブロンドの髪の毛、誰よりも青い眼があれば、
どんなに世界は素敵なものに変わるだろう」

ピコーラは現実の世界の境界を踏み出し、自分は誰よりも青い眼を
持っている世界へ行ってしまう。

みな、貧しさの中で生きている。ピコーラだけではなく、彼女を犯した
実父でさえも切ない過去を背負っている。

誰もピコーラを傷つけようとして傷つけた訳ではない。知らず知らずに
一番弱い者をどん底へ落としてしまう。

重層化した差別の構造を、小説で描き出した作品は人の心の弱さと
美の基準を考えさせてくれる。

多分、多くの日本人の美の基準も欧米基準なのだろうなと思う。私
自身もそうだから。そんな価値観を考え直す機会を本書から得た。

ただ、久し振りの小説だったので誰が誰を語っているのかを把握する
のに戸惑ったのと、原書の文章自体が私には合っていないかもしれ
ないが翻訳が読み難かったのが残念だ。