タイトルと表紙で損をしている

今度は古書店での美術書購入だって。1回の購入金額は2000〜
3000円と古書店主が言っていたな。

これも政治活動に必要だったのでしょうか、舛添東京都知事

あ、それに加えて視察でやたらと美術館に行っているようだけ
れど、これって単に特別展が見たかっただけでしょうか。他に
視察しなきゃいけない現場はなかったのでしょうかね。

拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(蓮池透
 講談社)読了。

もったいないな…と思う。本書のタイトルとカバー写真だ。安倍晋三
確かに北朝鮮による一連の日本人拉致事件を糧にしているかもだが、
それを前面に押し出して彼の名前をタイトルに入れ、カバー写真に
してしまったことである種の人たちは内容を読まずに批判するのじゃ
ないかな。

私もこのタイトルとカバー写真で購入に二の足を踏んだ。普段は立ち
読みはしないのだが、本書に限っては少々内容を確認してから購入
した。

内容はいたってまともであり、真面目である。だから余計にもったいな
い。「売らんかな」という版元の姿勢が裏目に出てしまっている。

小泉首相の電撃訪朝で拉致被害者のうち5人の帰国が実現した。
本書の著者は帰国者のひとりである蓮池薫氏の兄であり、家族会
の事務局長を務めていた透氏だ。

突然の弟の行方不明から奪還まで。試行錯誤を繰り返しながら歩ん
だ道を、時に自分の言動を反省し、政治家や外務省への苛立ちを
見せながら正直に綴っている。

知っていたつもりでも知らないことがあまりにも多かった。帰国した
5人とその家族は、国が手厚く保護しているものだと思っていた。
これが大間違い。

国から帰国者に渡るのは月々わずか13万円しかないのか。そりゃ
薫氏も翻訳などの仕事をしなければ生活が成り立たないよな。そし
て、もうひつと驚いたのは家族会の金の流れだ。

篤志家が「帰国者の生活の為に」とカンパしても当事者の手には
渡らないんだ。時折、ネット上で家族会の資金の流れの不透明さ
が指摘されている記事を読むが、家族会自体が既にアンタッチャ
ブルな存在になってしまっている。

ふと、思うんだ。安倍晋三は「拉致被害者の帰国は最優先課題」
と言う。だが、政治家にとって解決しない方が都合がいいんじゃない
のか。だって、選挙に使えるもの。

胸元にブルーリボンをつけて「北朝鮮はけしからん」ってやっていれ
ば一定の共感は生むだろうし、感情に訴えやすいんじゃないか。

そもそも、問題の解決の着地点はどこなのか。例えば拉致問題
象徴となっている横田めぐみさん。本書では北朝鮮で同じ招待所
にいた薫氏の語るめぐみさんの話は衝撃的なんだが、北朝鮮
が「死亡した」と報告した日本人に対して日本側が「そんな回答で
は受け取れない」と突っぱねるだけでいいのか。

長い年月が経った。死亡している被害者がいるかもしれない。そう
であれば「いつ・どこで・どこのように」との答えを求めるのが日本
側の仕事ではないのだろうか。

それにしても呆れるのは政治家たち。帰国した拉致被害者と写真に
おさまって、それを選挙活動に使うんだものな。一体、どれだけの
政治家が本気で解決を望んでいるんだろうか。

巻末のジャーナリスト青木理氏との対談も秀逸。しかし、弟が帰国
したからって「説得力がない」と透氏に退会を迫る家族会ってなん
だろう。温度差は確かにあるとは思うけどね。帰国したからって
拉致被害者の家族に変わりはないと思うのだけれど。結局、除名
されちゃったものな。

拉致問題北朝鮮との関係を考える上で、参考になる作品だった。