「単細胞」が褒め言葉になる日が来るかも

今度はベルギーか。ブリュッセル空港で2回の爆発、そして地下鉄でもだ。
これでベルギーはテロ警戒を最高レベルに引き上げた。

EUの本部があるんだよね、ベルギーって。このままヨーロッパ全土へ
飛び火しなきゃいいけどな。

『粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う』(中垣俊之 文春新書)読了。

単細胞。ひとつの細胞から出来ている生物のことだが、この言葉が
人間に向けられると「考えが単純なこと」と、いささかバカにしたよう
なニュアンスが含まれる。

これまで何度言われたことか。「なんでそう単細胞なんだ」って。ええ、
そうですよ。だって物事は単純に考えた方が楽じゃん。

さて、本書は単細胞である粘菌のお話である。2008年に「粘菌が
迷路などのパズルを解くことを証明した」として。そして、2010年に
は「粘菌で関東圏の交通網を構築した」として、2度もイグ・ノーベル
賞を受賞した著者。

冒頭のイグ・ノーベル賞授賞式の様子が楽しい。本家ノーベル賞
パロディではあるが、本家の受賞者をはじめ多くの研究者が式典を
心底楽しんでいるのが伝わって来る。

本家の授賞式はよくニュースで流れるけれど、イグ・ノーベル賞
授賞式の中継をしてくれないだろうか。見ているだけで楽しそうだ。

粘菌には脳も神経もない。ぐで〜っとしている粘菌だけれど、迷路
いっぱいに広げてふたつの出口にエサを置いてみると、あらあら
不思議。

半日ほどでエサ場を繋ぐ最短経路だけに管を残して、ふたつのエサ場
を繋いじゃう。

これだけでも面白いのに、関東圏の鉄道網の構築なんて「粘菌って
鉄オタなのか」と思うくらい、現在の鉄道網そっくりのネットワークを
作り上げちゃう。

こういった実験・研究に論考が加えられているんだが、単細胞とは言え、
その能力は奥が深い。脳も神経細胞もない。でも、ネットワークは構築
する。エサ目当てだから本能なんだろうけれど、それは環境適応能力
が高いってことにならないかな。

粘菌の研究が進歩して、いつか人間に向かって発せられる「単細胞」と
言う言葉は、褒め言葉になる日が来るかも。

そうしたら自慢するんだ。これまで何度も「単細胞」って言われたよ〜って。
あ…これだから「単細胞」って言わるのかも。