少女漫画を変えた作品が出来るまで

今朝の我が家の会話。

私「今日はホワイトデーです」
旦那「昨日、のど飴、あげたでしょう」
私「そんだけ?」
旦那「そもそも私はバレンタインにチョコレートをもらってません」

チッ。気付いていたか、白くまめ。

『少年の名はジルベール』(竹宮恵子 小学館)読了。

ジャケ買いしました。だって、表紙があのジルベールなのだもぉぉ。と、
少女漫画に興味のない人にはまったく分からないよね。

男の子同士の愛情をテーマにした「ボーイズラブ」もひとつのジャンルと
して今では市民権(?)を得た感がある。しかし、1970年代となると今と
まったく様相が違う。

そんな時代に少年同士の愛情を描いたのが竹宮恵子の漫画『風と木の
詩』という作品だ。主人公の少年の名はジルベール

本書は竹宮恵子が漫画家としてデビューして、上京し、編集者の反対に
遭いながらも7年の歳月をかけて『風と木の詩』を世に出すまでの半生
を記した作品である。

正直に言えば竹宮作品はあまり読んでいない。勿論、漫画は好きで読ん
ではいたが私が主に読んでいた漫画雑誌は「プリンセス」であり、「花と
ゆめ」であり、「ララ」だた。

それでも竹宮恵子とほぼ同期の萩尾望都作品は単行本でほぼ読んでい
た。どちらかと言えば萩尾作品の方が好みなんだな。「マッチ一本火事の
元、ポーの一族萩尾望都」ってのは『パタリロ!』にあったギャグだったか。

しかし、『風と木の詩』は別格。森茉莉『枯葉の寝床』なんて小説をコソコソ
と読んでいた身にとっては「こんな漫画が読みたかったんだよ〜」って感じ。

本書の読みどころは『風と木の詩』の連絡にこぎつけるまでなのかもしれ
ないが、それよりも興味深かったのは「大泉サロン」とそこで同居していた
萩尾望都に対する著者の複雑な感情だ。

男性漫画家が集った「ときわ荘」のような場所を、少女漫画たちで作ろうと
した「サロン」の名称とは程遠いボロ屋。建物はボロでも夢はいっぱいに
詰まった場所だった。山岸涼子坂田靖子も、この「大泉サロン」を訪れ
ていたんだね、共に私が好きな漫画家だけれど。

でも「ときわ荘」のようには続かなかった。「大泉サロン」は僅か2年ほどで
解散した。スランプに陥った竹宮恵子とは対照的に、マイペースで作品を
発表していく萩尾望都に向けられる竹宮の複雑な感情が結構正直に
書かれている。

多分、この時のふたりの状況が今に繋がっているんじゃないのだろうか。
竹宮恵子は既に描かなくなってしまったけれど、萩尾望都は今でも作品
を発表しているもの。

竹宮恵子萩尾望都。このふたりを含めて後に「24年組」と呼ばれるように
なる少女漫画家たちは、それまでの砂糖菓子のような少女漫画の概念
を打ち破った存在なんだよね。あ、青池保子24年組か。この人の作品
も好きだわ、私は。

それにしても増山法恵。この方、「大泉サロン」」の発案者で竹宮恵子
プロデューサー的存在だったのだが、「のりす・はーぜ」名義で『風と木の
詩』のその後を小説にしているんだよね。本人はその気ではなかったらし
いが、竹宮と編集者に説得されて書いたそうだがこれは書かない方が
よかったのじゃないかと思った。

全3巻。ずいぶん昔に読んだけれど、漫画の余韻が台無しだったもの。
竹宮自身、その後の構想は持っていたけれど描く気はなかったのだから
風と木の詩』は漫画が終わった時点で終わりとして欲しかったわ。

尚、本書にも度々登場する増山氏だが身近にいたら絶対に好きになれない
タイプである。