更生って何だろう。贖罪って何だろう

ドナルド・トランプ氏の強さは本物なんだろうか。指名選挙が進む
ごとに不安になって来るなぁ。

『「少年A」被害者遺族の慟哭』(藤井誠二 小学館新書)読了。

「息子は2度殺された」。神戸連続児童殺傷事件の「元少年A」が昨年
出版した手記に対して殺された男児の父は語った。

事件自体が衝撃的だっただけあって、この手記を購入して読んだ人も
多いのだろう。「元少年A」が手にした印税は2千万円を超えているとも
言われる。

少年法で守られた「元少年A」の実名や顔写真は一部の写真週刊誌で
の掲載を除くと報道されていない。未成年者の更生・矯正の為に設け
られている少年法だが、この「元少年A」の手記の発表に続く有料ブログ
の開設(既に閉鎖)などの行動を見ると彼は本当に更生したのだろう
か…と思う。

犯罪を、それも殺人と言う深刻な犯罪を引き起こした未成年者の更生・
矯正は難しい問題をはらんでいるのだと思う。加害者たちは少年法
守られているのに、被害者遺族たちは二次被害・三次被害を受け続け、
我が子を失った喪失感を抱えて生きて行かねばならない。

なかには真摯に自分の犯した罪と向き合い、遺族への謝罪を続ける
加害者もいるのだろう。だが、本書で取り上げられている加害者や
その家族を見ていると他人事としてしか受け止められないのか?と
感じてしまう。

数多くの少年事件を取材して来た著者だからこそ、罪の意識もうわべ
だけのような加害者と家族たちへの憤りが伝わって来る。

「一度の過ちで、息子のあとの人生を棒に振りたくはない」と言う加害者
の親。人生を棒に振るどころか、被害者の人生は奪われているのだが、
分かっているのだろうか。

同級生の女子生徒に付きまとった挙句に殺害し、遺族に対して事件を
おもしろい小説に書いてみたいという内容の手紙を寄越した加害者は、
少年院を出所後、成人になってから再度傷害事件を起こしている。

遺族のせめてもの願いは民事訴訟での損害賠償請求だが、賠償額が
決まっても1円も支払わないケースや、支払いが止まるケースのなんと
多いことか。

命はお金では賄えない。遺族もそれは分かっている。だが、賠償金を
支払わせることでしか加害者に贖罪を負わせる術がない。

幾度かの改正を経て、少年法は厳罰化されている。だが、それだけで
いいのだろうか。被害者遺族への謝罪もない、賠償金も支払わない。
いわば逃げ得になっていやしないだろうか。

未成年にも極刑を…とは思わない。僅かでも更生が見込めて、家族共々
犯した罪に対して真剣に向き合うことが出来るのであれば少年法も有効
なのだろう。

少年犯罪の加害者に対するシステムの、何かしらを見直さなければいけ
ないんじゃないだろうか。