受け継がれる抵抗の血脈

あら?TPPの署名式に甘利センセイの後任である伸晃センセイは
行かなかったのね。世界に出したら恥ずかしいってことかしら。

環境相時代の辺野古視察の時みたいに、公務で行っているのに
ダイビングでも楽しまれたらたまらないってことかしら。

『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』(小倉貞男
 中公新書)読了。

フランスの植民地になった頃からヴェトナム戦争までの時代は知って
いた。なかでもインドシナ戦争からヴェトナム戦争にかけては少なく
ない量の書籍を読んで来た。

だが、それだけではヴェトナムの歴史を知ったことにはならない。なので、
古代からホー・チ・ミンの死去までを扱った本書は良い教科書になった。

抵抗に次ぐ、抵抗の歴史だ。その昔、ヴェトナムは1000年に渡り中国に
支配されていた。だが、ただ属国に甘んじていたのではない。

「世に皇帝を名乗るのは中国の皇帝のみ」なんだけれど、表向きは
恭順を示しながらも国内では「皇帝」を名乗っている。しかも、定期的
に抵抗運動が頻発する。

当然のように中国に潰されてしまうのだけれど、それでも抵抗は止まない。
しかも、中国国内から移住して来た人が抵抗運動の先頭に立ったことも
ある。

阿片戦争で中国の力が弱まったと思ったら、今度はフランスがやって来る。
それは阿片戦争で中国から莫大な賠償金をせしめたイギリスを見て、「俺
たちもアジアで一儲けしよう」とインドシナへの侵攻を始めたからだ。

フランスによるヴェトナムの植民地化は中国による支配よりも過酷だった。
植民地からは搾り取れるだけ搾り取る。「自由・平等・博愛」を唱えてフラン
ス革命を起こした国とは思えないほどだ。

そうして先の大戦の際は日本軍が南進し、フランス・日本の二重支配と
なり、ヴェトナムは更なる過酷な時代を送る。

終戦によって日本軍は撤退したが、フランスは再度インドシナを支配しよう
と舞い戻って来る。そして、ヴェトナムの堪忍袋の緒が切れた。

インドシナ戦争からヴェトナム戦争へ。国内に多大な犠牲を出しながらも、
民族の独立を求める長い戦いを続けることになる。

インドシナ戦争からヴェトナム戦争の期間については本書は割愛されている。
この期間だけでいくつもの作品が書けちゃうくらいだもの。

近代まで本当に抵抗に抵抗を重ねた歴史なんだな。だから、近代兵器を
無尽蔵に使えたフランスもアメリカも、ヴェトナムから撤退せざるを得なく
なったんだろう。

確か以前にヴェトナム戦争についての作品を読んだ時にも書いたと思うの
だが、インドシナ戦争ヴェトナム戦争イデオロギーの戦いではなく、民族
としての独立を確実にする為の戦いであり、ヴェトナムの人々の執念なの
だろう。

それがよく表れているのが1945年9月2日に行われたホー・チ・ミンによる
ヴェトナム独立宣言だろう。その一部を引く。

「われわれヴェトナム民主共和国臨時政府の閣僚は世界に向かっておご
そかに宣言する。ヴェトナムは自由な独立国になる権利があり、事実、
すでにそうなっている。全ヴェトナム人民はその自由と独立を守るために、
すべての物質的、精神的力を動員し、生命と財産を捧げる決意である。」

気の遠くなるような時間を他国の支配下にありながら、あきらめることを
せずに、したたかに抵抗を続けた国はヴェトナム戦争後の経済制裁
も乗り越えたんだ。

フランスもアメリカも、ヴェトナムの歴史をもう少し知っていたら引き際を
見極められたかもしれないね。