ロシア版・大統領の陰謀

帰宅したらテレビのニュースが甘利センセイの記者会見を中継して
いた。ふ〜む。結局は「秘書がやりました」の常とう手段で手打ちか。

閣僚は辞任したようだけど、涙ぐんでたのは嵌められた口惜しさ?
自分の不甲斐なさ?どっちなんだろう。

それにしても「熨斗袋は入っていたが中は確かめなかった」ってさぁ。
熨斗袋にお金以外の何を入れるの?ビール券とか、百貨店の商品
券?あ、図書カードとかかな?

しかし、後任が伸晃ってさ。自民党は人材が払底しているのかな。

『国際指名手配 私はプーチンに追われている』(ビル・ブラウダー
 集英社)読了。

この日本語訳のサブタイトルだけでとっても怖いんだが。プーチンだよ。
その人に追われてるんだよ。顔面蒼白、脂汗が大量に流れ、手足は
震え、歯の根は合わず、震え声で「勘弁して下さい」と言いたくなる。

著者はソ連邦崩壊後の市場開放を機敏に捉え、ロシアに拠点を置いた
投資ファンドのCEOだ。そんな人が何故、プーチン政権から追われる身
となったのかを詳細に綴ったのが本書だ。

前半はアメリ共産党の顔であった祖父を持つ著者の生い立ちと、ファン
ド・マネージャーとして成功するまでを綴っている。いくつかの会社で躓き
ながらもその度に奇跡的なチャンスに恵まれるストーリーは少々中だる
みする。

しかし、後半が俄然面白くなる。否、面白いと言うと語弊があるんだが、
話の次が気になって上下2段組みでもサクサク読み進められた。

ロシアは国営企業を次々に民営化して行った。そのどさくさに乗って
私腹を肥やしたのがオルガルヒと呼ばれる若き新興財閥たちだ。著者
投資ファンドの成長させる間でまず対決したのがこのオルガルヒたち
だった。

「不正に手に入れた金は不問に伏そう。その代わりに政治には口を出す
な」。オリガルヒを集めた会合でプーチン大統領はこう言い放ち、それまで
やりたい放題だったオリガルヒを震えがらせた。

自身の投資ファンドの邪魔をするオリガルヒの不正を次々と暴いた著者
の行動は、ある時までプーチン大統領の思惑と一致していたのだろう。
だが、ある日、ロンドンからモスクワへ戻ったところでロシアへの入国を
拒否され、ロンドンへ強制送還される。

ここから著者のロシアでの立場は急転直下。ロシアでの資産はどうにか
回収はしたものの、関連会社はいつの間にか乗っ取られ、脱税容疑ま
でかけられる。

それでも著者はめげない。自分に対する脱税はでっち上げられたもので
あるのは確実。なので、今度はロシアの警察や内務省の担当者の不正を
暴くことで反撃の狼煙を上げる。

その過程で著者の投資ファンドに係わる人々は身の危険を感じて続々と
ロシアから脱出するのだが、法の正義を信じたひとりの弁護士がロシア
国内に留まり不当に身柄を拘束された挙句、虐殺される。

この弁護士の死がアメリカ議会をも巻き込み、人権侵害の疑いをかけられ
たロシア人のアメリカ入国禁止とアメリカ国内の資産を凍結するマグニツ
キー法が成立した。

これに黙っているプーチン大統領ではない。アメリカ人とロシアの子供との
養子縁組を禁止する法案を成立させた。それも僅か2週間で。

そうしてロシア政府はインターポールに対し、著者の国際指名手配を
申請した。

築き上げた人脈をフルに活用しているとは言え、著者のバイタリティに
は舌を巻くと同時に、法も人権も無視するロシアが怖い。

先日、元FSB幹部でロンドンでポロニウムで暗殺されたアレクサンドル・
リトビネンコの事件でイギリス司法当局は「プーチン大統領も了承の可能
性」と報告した。

さも、ありなん。だって、ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤや、
プーチンの野党指導者だったボリス・ネムツォフの暗殺だって、
とってもとっても怪しいもの。

もし、今後本書の著者が不審死を遂げることがあったなら、きっとその
影には…。おや?こんな時間に誰か来たようだ。

うわっ、誰だ、お前。なにを?¡△$&%…。