武器を捨てエレガントに生きる

阪神淡路大震災から今日で21年。追悼の行事も半減しているそうだ。
震災後に生まれた人も既に成人になる年月。ある程度は仕方ないの
かもしれない。

メディアもニュースで取り上げるだけで、テレビでも特別番組はない
ものね。いつか、東日本大震災福島第一原子力発電所の事故も
同じようになるのかな。

『WHAT IS SAPEUR? 貧しくも世界一エレガントなコンゴの男たち』
NHK「地球イチバン」制作班/ディレクター影島裕一 祥伝社)読了。

中央アフリカに位置するコンゴ共和国。面積は日本と同じくらい。人口は
約32分の1。1990年代に内戦を経験したこの国の平均月収は約2万5千円。
1日を130円以下で生活する人が3割存在する。

決して豊かな国ではない。貧困国に分類されるコンゴ共和国だが、そこ
にはなんともダンディな男たちがいる。

服にお金をかける彼らは「サプール」と呼ばれる。そんなサプールを取材
したのが本書の元になったNHKの番組だ。この番組は私も観ていたので、
迷わず購入した。

サプールたちはコンゴ共和国の富裕層ではない。みんな「普通の人々」だ。
普段は消防士だったり、タクシー・ドライバーだったり、電気工だったり。

そんな彼らは週末になると高級ブランドの服で着飾り、気取って歩き、独特
のステップを踏んで街に繰り出す。

テレビでも観たけれど、本当に格好いいのよ。ビビッド・カラーを組み合わせ
た服といい、チーフやネクタイ、サングラスなどの小物といい、コーディネート
の妙にうっとりしちゃう。本書にもサプールたちの写真が満載だ。

ただ着飾った姿だけが格好いいのではない。サプールは平和の象徴でも
あるんだ。サプールは決して喧嘩をしない。相手を尊重し、敬意を払う。

「武器は持たない。軍靴を履く代わりに平和のステップを踏む」

内戦を経て来た経験もあるんだろうな。年配のサプールたちは何もかもを
奪い去った過去を繰り返してはいけないと思ってもいる。

砂埃が立つ道に掘っ立て小屋のような家。収入だって多い訳じゃない。
それでもサプールたちは高級ブランドの服を買い、自身を飾る。

服が欲しければいくばくかの収入がなければいけない。だから、仕事に
就き、まじめに働く。週末、ブランド品を身に着けるには常に清潔を保た
なければいけない。実際、服飾品にお金をつぎ込むことで別れてしまった
夫婦もいるようだが、多くの奥様たちも自分の旦那様がサプールである
ことで喜んでいる人も多いようだ。

信念といい、着飾った姿といい、本当に格好いいんだよな。ファッションを
楽しむっていうのは、このサプールたちのことを言うんじゃないだろうか。
季節ごとに最新の服をとっかえひっかえするんじゃなくてさ。

サプールではないが、アフリカの女性たちが色とりどりの布を身に着けて
いる姿を目にすることがある。彼女らの色彩のセンスって素晴らしいのだ
よね。あれは真似が出来ないわ。