都合の悪いものは隠せ・捨てろ・燃やせ

久し振りに原稿書きの仕事を受けたら地獄だった。(-_-;)

データくらいきちんと整理して渡さんかいっ!編集者としての基本
だろうに…ブツブツ。

山ほど送られて来た資料から使える部分が少しかないってなんだ
よ〜。これなら資料集めから自分でやった方が早かったわ。

『国家と秘密 隠される公文書』(久保亨/瀬畑源 集英社新書
読了。

数年前、某国営放送白洲次郎の生涯を追ったドラマが放映された。
冒頭、晩年の次郎が手紙や文書を燃やすシーンがある。火にくべる
文書には「極秘」の文字。

妻・正子の独白で語られるシーンなのだが、そこで正子は歴史的に
価値のある文書でも燃やすのが次郎の流儀だと語っていた。

どんな流儀だか知らんがな、それ、あんたの私物じゃないからな。
国の文書は国民の財産だ。勝手に燃やすな、次郎。ドラマながら
画面に突っ込んでいた。

白洲次郎を例に取ったが、重要であろう文書を処分したのは彼だけ
ではない。官庁ぐるみどころか、政府が率先して知られたらまずい
文書を勝手に処分して来たんだよね、日本って。

それはGHQの上陸直前出会ったり、情報公開法施行直前であったり。
誰も責任を取らなくていいように、責任の所在がはっきるするような
形跡がある文書はことごとく処分されて来た。

「国民の知る権利だと?そんなもん、ないわ」ってくらいにこの国は
情報公開後進国である。それなのに、特定秘密保護法の施行で
ますます国民の知る権利は限定されるようになる。

本書は特定秘密保護法の施行から改めて日本における情報公開と
公文書管理の歴史と問題点を分かりやすく解説している。

文書管理にしても情報公開にしても、本当に日本は後進国なんだよ
な。本書では欧米のみならず、中国や韓国、ヴェトナム等の文書管理
公文書館の成立過程が紹介されている。他国に比べ、日本がいか
に公文書の管理・公開の手法が遅れているかを実感する。

私は特定秘密保護法の施行に危険性を感じるのだが、すべての文書
を公開しろとは思っていない。外交や防衛など、トップシークレット扱い
の文書は勿論非公開でもいいと思う。ただし、一定の保管を過ぎての
公開はして欲しいが。

しかし、特定秘密保護法はあまりにも曖昧すぎる。そもそも公開されて
いない文書が多い日本で、「あれも秘密、これも秘密」にして情報を
出さない手段として使われるんじゃないか。

知らせない・隠す・処分する。国民の知る権利の範囲はこれまで以上に
狭くなるのじゃないだろうか。

「日本にない文書はアメリカの公文書館で探せ」ってなっちゃうよ。実際、
その方が見つかる確率が高いようだけど。

情報公開制度の初心者でも無理なく読める良書だ。巻末には特定秘密
保護法と情報公開法が掲載されている。これは手元に残しておきたい
作品である。