理想の国を作るための手段

議員辞職勧告が出た。Twitterで「同性愛者は異常」などと呟いて
いた海老名市議にだ。

言い訳してたよね。酔って呟いたとかって。でも、それが本音だよね。
ほんにTwitterは「バカ発見器」だわ。71歳にもなって何をやってるの
だろうな、この市議さんは。

イスラム国 テロリストが国家をつくる時』(ロレッタ・ナポリオーニ
 文藝春秋)読了。

インフラを整備し、医療を提供し、治安を維持し、豊富な資金を持ち、兵士
には安いけれど賃金も出る。もしかしたら、内部的には北朝鮮よりも安定
しているのもしれない…なんて思ってしまう。

ただ、これが「国家」でも「地域」でもないことと、人質を殺害し、異なる文化
の貴重な文化財を破壊しまくっているのが大問題だ。

イスラム国」である。既に国際社会ではISISやISILと呼称されるように
なったが、ここでは本書の表記に準ずる。

イスラム過激派やテロ組織と表現される「イスラム国」は何故生まれ、今で
も支配地域を拡大しているのか。欧米メディアの言い分を垂れ流す日本の
報道だけからでは理解出来ない「イスラム国」誕生の背景と、彼らが何を
目指しているのかを解説したのが本書だ。

日本人2人の人質が殺害された直後に購入していたのだが、積んだまま
忘れていた。もっと早く読んでおけばよかったと今更ながら後悔している。

さて、問題の「イスラム国」だが、結局は第一次世界大戦中に結ばれた
秘密協定であるサイクス・ピコ協定にまでその原因を遡るんだよな。
まぁ、「やっぱりそこか」って感じなんだけど。

アフリカにしろ、中東にしろ、地図を見ていると国境線が直線なのだもの。
ヨーロッパやアジアと比較してみると明らかにおかしいよね、直線って。
西欧列強が勝手に国境線を引いたからに他ならない。

だから、本来あるべきイスラム国家を父祖の地に建国しようとしているの
が「イスラム国」である。ユダヤ人がイスラエルを建国したのと動機はなんら
変わらない。

歴史的な正当性の主張。そこへ現代的なテクノロジーを駆使したプロパ
ガンダが加わる。それだけではない。自爆テロ1件にどれだけの費用が
かかるかの詳細を記した決算報告書までを持っている集団なのだ。

そして、オスマン・トルコの解体と共に姿を消したカリフ。予言者ムハマンド
代理人であるカリフの復活こそ、本来のイスラム国家のありようである
ことから自らカリフ即位を宣言したが誰あろう。「イスラム国」の指導者で
あるアル・バグダディである。

視点を変えてみれば魅力的な組織に映るのだろうと思う。第一次世界大戦
までさかのぼることをしなくても、イラク戦争や「アラブの春」(失敗だけど)
で欧米の価値観を押し付けられて来たのだから。

時々思うことがある。欧米型の民主主義があらゆる国で通用するものなの
か…と。そうではない社会形態の方がうまく行く地域もあるんじゃないか。

イスラム国」を肯定する訳じゃないが、結局は欧米は自分たちがこれまで
やってきたこを「イスラム国」という脅威でツケを払わされているんじゃない
んだろうか。まぁ、我が国・日本も欧米側にいるんだけどさ。

それにして、アメリカの情報機関って何をしてたんだろうな。盗聴やら何やら
してたんだろう。しかもアル・バグダディはアメリカに対する抵抗組織の設立
に関与したとの疑いで収容所に拘束されていたのにね。

何故、「イスラム国」に共感し、世界中から人が集まるのか。本書は客観的
に非常に分かりやすくまとめてある。だって、「とりあえず中東にごめんなさい
しろよ、イギリスとフランス」と思いそうになったもの。