ノンストップ歴史ノンフィクション

線路に自転車。昨夜、中央快速の飯田橋〜市ヶ谷の間でのことだ。
大きな事故にはならなかったようだが、40分程度の遅延だったとか。

いたずらだろうね。以前も高速道路で同じようなことがあった。
一歩間違えたら大事故だって想像できないのだろうか。こういうことを
するたわけは。プンスカ。

『原爆を盗め! 史上最も恐ろしい爆弾はこうしてるくられた』 (スティーヴ・
シャンンキン 紀伊国屋書店)読了。

原子力爆弾の出現は、人類の歴史を大きく変えた。

時は第二次世界大戦下。ドイツの科学者がウラン原子が分裂することを
発見してから、ドイツ・アメリカとイギリス・ソ連が、他国を出し抜こうと最高
機密のプロジェクトして開発を始めた。

開発競争の一方で、もう一つの闘いが繰り広げられていた。ナチス・ドイツ
の闘いで手いっぱいのソ連は、対ドイツでは手を結んだアメリカから原爆
開発計画の情報を得ようと暗躍する。

オッペンハイマーが責任者となって、アメリカとイギリスの有能な科学者を
集めて始まった「マンハッタン計画」。ニューメキシコ州ロスアラモスの
研究所は人の出入りは厳重に管理され、そこで何が行われているかに
はかん口令が敷かれていた。

研究の為に呼び集められた科学者たちにはFBIの目が光る。しかし、それ
でも情報はソ連側に漏れていた。しかも、原子爆弾そのものの設計図ま
でも…だ。

スパイ映画やスパイ小説は大好きだ。だが、本書は映画や小説よりも
面白い。原書が出版されたアメリカではヤングアダルト向けということな
で、中学生・高校生向けに書かれた内容なので原爆の仕組みについて
も小難しいことは書かれておらず、大まかな概要だけを専門用語を抜き
して説明されている。

映画えは「ノンストップ・ムービー」と呼ばれる作品があるが、その言葉を
借りるなら本書は「ノンストップ歴史ノンフィクション」である。スパイという
興味深い題材もあるのだが、各章の構成がうまく、「え、この後、どうなる
の?」と次が気になって、危うく時間を忘れそうになった。

ノルウェーナチス・ドイツに侵攻されたことは知っていたが、ノルウェー
レジスタンス運動が重要な役割を担っていたのを本書で初めて知った。
これまで原爆開発について個々で知っていたことが、すべて本書で
繋がっている。歴史は俯瞰して見なきゃいけないんだなと改めて思った。

図書館戦争』のように、劇画的な小説がある。映像が想像できる小説を
私はそう呼んでいるのだが、本書は劇画的なノンフィクションだと感じた。
そのうち映画化されないかな。原爆開発競争入門としては秀逸な作品。

ただし、原爆の仕組み・開発等を深く知りたいと思う人には物足りない
かもしれないが。

ハラハラドキドキ。手に汗握るスリリングな展開が好きな方にはおすすめ
の作品だ。私はこういう歴史ノンフィクションも「あり」だと思う。

余談だが、マンハッタン計画には若き日のリチャード・ファインマン氏も
参加している。機密が漏れていないかとFBIがピリピリしているのに、
家族宛ての手紙に暗号を使ったり(勿論、FBIが検閲している)、欲しい
資料が同僚のファイルにしまわれていればキャビネットの鍵を壊して
取り出したりと、野放図なのである。

「ご冗談でしょう。ファインマンさん」ならぬ「ご冗談はおやめください、
ファインマンさん」とFBIは思ったことだろうな。