荒野を開拓し、荒野から去った

中期決算で過去最高の経常黒字だって。あ、東京電力のことね。

ふ〜〜〜〜ん。「原発動かさなかったら会社が潰れるっ!」とか
言ってなかったっけ?ふ〜〜ん、過去最高の経常黒字ねぇ。

まだ仮設や避難先で生活している人たち、いるよね。ふ〜〜〜ん。

『就職しないで生きるには21 荒野の古本屋』(森岡督行 晶文社
読了。

シリーズ名の「就職しないで生きるには21」を念頭に置いて読むと
肩透かしを食う。だって、このシリーズ名を意識すると、古本屋に
なる為の指南書と受け取られてしまいそうだ。

自叙伝というにはまだ早そうだし、エッセイとして読めばいいのかな。

古い建物と、散歩と、古本が好き。必要最低限の生活費のみで
あとは趣味に生きたい。

そんな暮らしを実践していた著者が、神保町の古書店街の老舗・
一誠堂書店に就職し、8年後に独立する。

その独立の地が東京都中央区茅場町なのである。証言会社や
大手企業の本社ばかりが立地する街だ。

昭和レトロの面影を残すビルの一室にあった古道具店が店じまい
する。その古道具屋を訪れ、「ここで古本屋をやりたいっ!」と
閃いてしまった著者。

しかし、そこは茅場町である。一時、私も茅場町にある会社に通勤
していたので分かるのだが、土曜・日曜なんて本当に人がいない街
なんだな。正に都会の荒野。

来ないのよ、お客さんが。そりゃそうだと思うんだ。路地裏散歩が好きな
人でも、茅場町に古本屋があるなんて思わないもの。私もこの「森岡
書店」については人づてに聞いて初めて知ったのだもの。

試行錯誤と人との交流を糧として、森岡書店はギャラリーを併設した
古本屋として成長していく。

ひとつのビジネス・モデルとして捉えればいいのかな。近年は古本
を扱うだけではなく、ワークショップや朗読会を開催している古本屋
さんが増えた。森岡書店もそのひとつなのだろうね。

だが、残念ながら茅場町の店舗は2015年8月で閉店。現在は営業形態
を変えて銀座1丁目で営業している。

茅場町の店舗は著者がなけなしの資金を投入して開店にまでこぎつけ
ているのだが、銀座の店舗はスープストック・トーキョーを擁するスマイルズ
が出資ているんだよね。

やはり今時、個人資本で古本屋を続けるにはいささか難しいのかな。