アメリカを歩き、アメリカで寝る

プロ野球選手が野球賭博って…ダメでしょ。ジャイアンツの3選手。
大相撲の力士が野球賭博でえらいことになったのを忘れちゃった
のかしらね。

まさか芋づる式に他にもやっていた選手が出て来るってことはない
よね?

『スエロは洞窟で暮らすことにした』(マーク・サンディーン  紀伊国屋
書店)読了。

自然が与えてくれるもののみで生活してみよう。そんな思いからアラスカ
の荒野へ出かけて行った青年の軌跡を辿ったのはジョン・クラカワーの
『荒野へ』だった。確か映画化もされているはず。

『荒野へ』の青年の理想の生活は悲劇的な結末だったが、本書の主人公
ダニエル・スエロは10年以上、自分が思い描いた理想の生活を続けている。

スエロが暮らすのはアメリカ・ユタ州モアブの洞窟。お金は一切持って
いない。「お金に価値があるというのは、みんなが共有しているフィクション
なのだ」と気付いた時、手元にあった最後の30ドルを公衆電話の上に
置き去りした。

ただ、洞窟に辿り着くまでの道のりは平たんではなかった。キリスト教原理
主義の両親の末っ子として生まれ、長じるに従って原理主義に疑問を持つ。
そこであらゆる宗教・思想に触れてみることにした。

この過程が私には少々難解だった。キリスト教、それも原理主義の考え
がよく分からないのもあるし、哲学的思考なんて屁理屈にしか思えない
のだもの。

ただ、海外援助として訪れた南米や福祉活動の現場で目にした制度の
矛盾に腹を立てたり、絶望したりするスエロに対しては共感した。

ゲイであることに気付き、うつ状態に襲われ、自殺未遂を起こし、両親の
信仰と距離を置き、タイやインドで仏教に触れ、北米大陸を放浪した
果てにお金に別れを告げ、車も家も持たずに洞窟で暮らすことを選んだ。

しかし、彼は決して世捨て人ではない。公共図書館のコンピュータで
ブログを書くし、彼に興味を持って洞窟を訪れる人と一時ではあるが
一緒に生活していたりする。

自然の恵みだけではなくゴミ箱を漁って食べ物を拾ったり、不用品の
山から使える道具を見つけたり。そんなスエロの生活を読んでいると、
人間は所有する物が多ければ多いほど、不自由になるんだなと感じた。

しかし、誰もがスエロのような生活を送れるわけはない。働いていくばく
かのお金を得て、必要な物を購入して。でも、必要以上の物を持たない
生活は出来るんじゃないだろうか。

まずは必要のない食料を買わないことかな。あ…本は読む分だけ買え
という話もあるが…。

尚、本書の中で好きなエピソード。警察官に呼び止められたスエロ。
「何をしている?」と聞かれて「アメリカを歩いている」と答えると、警察
官は納得したようにその場を去った。

あぁ、日本で同じことを言ったら日本のお巡りさんはそのまま行かせて
くれるだろうか。それとも交番に連行されちゃうのかしら。やってみたい
けど、勇気がないわ。