溢れるほどの「あいしてる」

「ある国々が歴史を偽ろうとしている」

ロシア・プーチン閣下の、中国での抗日戦争勝利の式典出席前の
お言葉である。

あの…もしかして、怒っていらっしゃる?うちの安倍が「70年談話」
ならぬ「70年ポエム」で日露戦争を美化したことを。

まぁ、それでもロシアに言われたくはないんですけどね…ブツブツ。

『パパ、ママ、あいしてる エレナが残したメッセージ』(ブルック&
キース・デザリック 早川書房)読了。

6歳になる直前の少女に下された診断は悪性の脳腫瘍。余命は135日。
少女の名前はエレナ・デザリック。ピンクが好き、幼稚園とお友達が好き、
本を読むのが好き、美しいブラウンの髪を引き立てるキラキラしたヘア・
バンドが好き。

しかし、病は容赦がなかった。例えそれが幼い子供だとしても。放射線
治療の効果で一時は腫瘍が小さくなった。だが、徐々にエレナの小さな
体にはマヒが表れる。

右腕と右脚から始まり、喉頭反応が鈍くなり、言葉を発することもままなら
なくなる。いつかエレナは言葉を失うかもしれない。その日の為に両親は
エレナに手話を教える。

テレビのバラエティ番組でも何度か取り上げられたことのある少女の
話なので知っている人もいるかもしれない。ただ、テレビ番組で紹介
されたのは本書の一部に過ぎない。

娘の発病から両親がインターネット上に書き始めた日記をまとめたのが
本書だ。それはまだ幼くて、姉・エレナのことを記憶しておくことが出来ない
妹・グレースの為に姉の思い出を残す目的で始められた。

主に日記を書いているのは父であるキース。時々、母のブルックの筆に
なる日もある。難病を宣告された子を持つ親の苦悩、いつか娘を失う
かもしれないとの恐怖、結果が見えない治療に対する苛立ち。

それらが感情を抑制して綴られている。抑制されているだけに、戸惑い
や悲しみがじわじわと胸に迫る。「何故、うちの娘が?」という答えの
ない問いかけ。治療方法を模索するのはエレナの為ではなく、自分たち
の為なのではとの迷い。

そんな辛い日々の中でもエレナと一緒に過ごした楽しい時間の思い出
もたくさん詰まっている。

家族を失うのは、その人がどんな年齢であっても哀しい。それが、あらゆる
可能性を秘めた幼い子なら尚更だ。この作品には「愛」がたくさん詰まって
いる。

余命宣告から8か月半後、エレナは家族に見守られて旅立った。残された
家族にエレナはたくさんのメッセージを残していた。

「I Love You MOM DAD Grace」

食器棚の中から、本の間から、リネン類の中から、かばんのポケットから。
生前のエレナはハートの絵を添えたメッセージ・カードを、家の中のいろんな
場所に隠していた。

テレビ番組ではこのエピソードに焦点を当てていた。たまらないよね、
6歳の女の子が自分の死を知っていたとしか思えないもの。本書冒頭で
父のキースが綴っているが「病気になってごめんなさい」なんて綴られた
手紙が出て来たなんて、どうすりゃいいのさ。

家族の愛に守られて、家族に溢れるほどの「あいしてる」を残して天に
召された少女・エレナ。きっと彼女の家族は、エレナのことを忘れる日は
ないだろう。それはきっと、幼かった妹・グレースもそうだろうと思う。