祖国への忠誠よりも自身の信念に生きた

僅差だったね、大阪都構想住民投票。ほんの少し反対が
上回った。大阪市民じゃないから結果は関係ないんだけど、
お子ちゃま市長の顔を見るのが嫌なんだよな。

市長の任期をもって政治家引退とか言ってたけど、こいつの
言うことは信用ならない。府知事選の出馬だって「200%ない」
とか言いながら出馬してたもの。

お子ちゃま市長・チンピラ府知事、揃って引退は喜ばしい限りだ。

『裏切りの血統』(アンソニー・ケイヴブラウン 原書房)読了。

1950年代。当事国のイギリスのみならず、西側諸国に大きな
衝撃をもたらした「ケンブリッジ・ファイブ」。イギリスの国家中枢
の機関でソ連のスパイとして働いた5人の男。

そのなかのひとりで、もっとも有名になったのがキム・フィルビィ
である。スパイ小説のみならず、スパイを扱ったノンフィクション
好きとしては知っていて当たり前の名前だし、とても興味深い
人物だ。

彼については多少の知識はあったが、その父であるセント・ジョン・
フィルビィもまた、国家公務員でありながら祖国の為よりもアラブの
独立を守る為に働いたとは知らなかった。

本書はフィルビィ親子、2代に渡る裏切りの物語を綿密に追っている。
否、イギリスから見れば裏切りなのかもしれないけれど、親子ふたり
は祖国への忠誠よりも自身の信念に重きを置いただけなのかも
しれない。

父セント・ジョンの時代、アラブはヨーロッパ列強にいいように操られ
ていた。有名なイギリスの三枚舌外交だ。ユダヤ人にはイスラエル
建国を約束し、アラブにはパレスチナの存続を約束し、フランスと
は「中東の利益をお互いに吸い上げちゃおう」と約束する。

上手に立ち回れば中東の石油利権は大英帝国のものになるはず
だった。それを阻止したのがセント・ジョン・フィルビィだった。

イギリスが手にするはずだった石油利権は、あろうことかアメリカの
手に渡ってしまった。

そして、息子キムはケンブリッジ大学在学中にソ連のスパイ機関に
スカウトされ、二重スパイとしてMI6で部長の地位にまで登り詰める。

しかも従事したのは対ソ連諜報活動。今から思えばとってもまぬけ
な話なのだが、ソ連の二重スパイがソ連を探り、イギリスの情報が
筒抜けになってたんだんだよね。

親子鷹。ある才能に秀でた親子に使われる呼称だが、フィルビィ親子
も親子鷹なのかもしれない。

イギリス国家にとっては許すことの出来ない親子だろうが、自身の
思想・信念を貫き通した意志の強さは見事なんじゃないか。

尚、息子キムは正体がばれそうになってソ連に亡命。父セント・ジョン
イスラムに改宗し、サウジアラビア独立に手を貸している。