お人柄をしのばせるお言葉

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を
通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との
協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす
恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ること
のないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを
宣言し、この憲法を確定する。(以下、略)」

これが日本国憲法の前文。書き出しは「日本国民は」である。
これが自民党の改正草案だと下記のようになる。

「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴で
ある天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の
三権分立に基づいて統治される。(以下、略)」

憲法記念日である今日、護憲派改憲派が各地で集会を開いた。
自民党改正草案じゃ主役は「国」なんだな。「国民」ではない。

先日、ニュースを見ていたら改憲派の国会議員センセイが
「ドイツもフランスも(憲法)改正をしている」と主張していた。

ちょっと待て。第二次世界大戦後、ドイツは長らく東西に分裂
していたよね?それは知っているのかしら。分裂していた国が
統一されたら改正は当然じゃないの?

もうひとつのフランスだけど、こちらは人権に関する改正であって、
改憲派が引き合いに出すような改正ではありません。聞いている
者に誤解させるような発言はしないように。

そして、改憲派の方々は「現行憲法アメリカからの押し付け
憲法だ」って言うよね。だったら、自衛隊だってアメリカから押し
付けられて作ったんじゃないの?そっちは無視?

憲法に関してはアメリカの押し付けを主張するのに、「日米同盟」
を持ち出してアメリカに尻尾を振ってりゃ世話ないわなぁ。

『今日は来てくれてありがとう 昭和天皇の会話集』(松崎敏弥
 ごま書房新社)読了。

リアルタイムで聴いていたわけではないが、昭和天皇のお言葉
といえばやっぱり玉音放送。テレビを通じて何度も聞いた。

そして、もうひとつ。「あ、そう」。少々素っ気なく聞こえるけど、
場面場面によってこの「あ、そう」も何種類かあるらしいという
のを誰かの本で読んだ。

本書は記者会見はもとより、侍従たちとのやり取り、園遊会
の招待客へのお言葉、ご静養先での記者たちの質問への
お答え等、昭和天皇が交わされた会話を集めたもの。

不敬を承知で言う。とってもチャーミングなおじいちゃまである。

「私は丸の内のサラリーマンのように、満員電車で通勤してる
のではないから、疲れるとか、仕事がたいへんとかいうことは
ない。」

記者からご公務が忙し過ぎるのではないかと聞かれてのお答え。
いやいや、お忙しかったでしょうに。

チェース・マンハッタン銀行頭取に東京支店は皇居の近くにある
からたまにはお立ち寄り下さいと言われれば

「預けにですか、それとも借りにですか?」

あぁ、陛下が銀行の窓口で順番待ちをしている姿を思い浮かべて
しまった。

常陸宮殿下から贈られたフグを巡っての侍医とのやり取りも
楽しい。安全に調理されているとはいえ、万が一を考えて
食べることを禁止した侍医に、執拗に食い下がる昭和天皇
可愛くて仕方なかった常陸宮殿下からのフグだっただけに
どうしても食べたかったのでしょうね。

生真面目だったと言われる昭和天皇のお人柄が、数々の
お言葉から伝わって来る。

「これでけっこうだ。皇太子にはこれが手ごろだよ。あまりりっぱ
なものや高価なものを与えては将来のためにならない。」

今上天皇学習院初等科卒業にあたって中古カメラを送られた
時のお言葉だそうだ。

内親王殿下に高級ブランドバッグを持たせる、今の皇太子ご夫妻
に読んで頂きたい。