原発持つ町の哀れを君知らず

あの日も、被災地では雪が降っていた。今日も被災地では雪
だったようだ。東日本大震災の発災から今日で4年となる。

今でも2500名を超える方たちの行方が分からない。福島第一
原発を抱える自治体の復興への道のりはまだまだ遠い。

東京オリンピックなんてやってる場合じゃないんだけどね。
オリンピックを開催したからって被災地の復興が進むわけ
じゃないんだから。

福島第一原発廃炉が終わるまで、私が生きているかは分から
ないが、この日を風化させることはしない。

『プロメテウスの罠 6 ふるさとを終われた人々の、魂の
叫び!』(朝日新聞特別報道部 学研)読了。

朝日新聞朝刊連載記事の書籍化第6弾。月に1冊は東日本大震災
福島第一原発事故関連の本を読もうを決めているのだが、
なかなか手が回らないのが現状だ。前作第5弾から随分と
時間が空いてしまった。

栃木県の中禅寺湖群馬県の赤城大沼ではニジマスやワカサギ
セシウム濃度が国の基準を超えた。両の漁業関係者にとって
は死活問題だ。これだって原発事故の影響i以外ないだろう。

福島第一原発事故で避難を余儀なくされた人たちが奪われた
のは家や財産、ふるさとだけではない。多くの民族伝統が
消滅の危機に晒される。

多重債務に苦しむ人々を救おうと奮闘する司法書士、住民の
姿が消えた地域で増えるイノシシに対応する罠猟師等、当事者
たちの話は痛みを伴わずには読めない。

なかでも秀逸なのは元東京電力社員であり、原子炉を知り尽く
した男性による福島第一原発の原子炉データの解析だ。

東京電力は今でも「事故は津波によるもの」と主張する。しかし、
「炉心屋」と呼ばれる男性の解析によると、津波以前に地震
配管の一部に亀裂が発生した可能性があるという。

そして、東京電力は恣意的にデータの隠蔽をしている可能性が
ある。そりゃそうだろう。原子炉建屋内を調査したいと言った
国会事故調に対して「真っ暗だし、穴があいてるし。危ないから
入れないよ」と嘘を吐いたような企業だもんな。

結局は事故原因の究明も出来ないまま、廃炉作業に入ってし
まった。今後、「炉心屋」の男性が言うようなすべてのデータ
を東電が公開するかも疑問だ。

改めて東京電力の当事者意識の希薄さを感じると共に、責任の
なさに憤りを感じる。

尚、巻末に収録されている浪江町町長・馬場有氏、浪江町民・
菅野みずえさん、福島原発訴訟の弁護士・馬奈木巌太郎氏の
対談だけでも必読。

これは報道を通してしか被災地の様子を知ることが出来ない
私にとっては耳に痛いし、被災地や被災した人々のストレート
な感情なのだろうなと感じた。

「──お金ではなく、元の生活を戻してくれと。
管野 2011年3月10日の浪江です。以前の暮らしをしたいと
   いう私たちの思いをなぜ分かってくれないのだろうと
   思います。」

原発政策は国策だった。そして、東京電力は独占企業だ。
それでも、誰も責任を取らない。これが私が生まれ育った
国なんだよな。

原発持つ町の哀れを君知らず『電気どうするとたはやすく言ふ』

大熊町原発への怒りを歌に詠み続けた人の作品のひとつ。
再稼働を叫ぶ人に、この歌を片っ端から送りたいわ。