その時、自分に出来ることは何か

東京大空襲から今日で70年。夕方6時のNHKニュースを見ようと
思ったら、またもや安倍晋三の記者会見が始まった。

ドイツ・メルケル首相も来日したことだし、先の大戦に関する
ことかと思ったら東日本大震災から4年が経つことについての
会見だった。

それ、明日でいいし。3月10日は東京大空襲の日なんだもの。
メルケル首相は「歴史と向き合う」って言ってたでしょ。
修正してないで向き合ってね。

『救命─東日本大震災、医師たちの奮闘─』(海堂尊:監修
  新潮文庫)読了。

地震だけであったのなら、あれほどの死者・行方不明者は
出なかったであろう東日本大震災。本書は自らも被災しな
がら、または震災直後に被災地へ支援に入った医師9人へ
のインタビューで構成されたノンフィクションだ。

ある医師は診療中に自分の病院で震災にあった。往診鞄
だけを持って避難した。避難所ですぐに救護所を設置し、
避難した人たちの心の支えにもなった。

「医は仁術」。皆、不安な思いで避難所へ集まった。そこに
見知った医師がいるだけである程度の不安は解消されるもの
なのだろう。

地震だけなら日本には阪神淡路大震災の経験がある。だが、
津波の被害にはその経験は役に立たなかった。崩壊した
建物に挟まれた人や大怪我を負った人の手当ては、ほとんど
必要なかった。そういった人たちは身動き出来ぬまま、津波
にのみ込まれてしまったから。

その時、自分に出来ることは何か。情報も、医療機器も医薬品
も、何もかも不足したなかで医師たちは最善を尽くしたのだろう。
彼らにとっては「当然のこと」なのだろうが、その行いはやはり
尊いものだと思う。

特に自分自身も被災し、心に傷を抱えながら被災者の心のケア
にあっている心療内科医の話は印象深かった。被災者の話を
丁寧に聞き、一緒に涙を流す。

心療内科医の常道ではないのかもしれないが、一緒に泣き、
一緒に笑う。それで話し手の心は少し楽になるのかもしれ
ないね。

ただ、気になったこともある。医療は素晴らしい、行政はダメだ
みたいな記述があること。あの混乱のなか、行政も精一杯だった
のではないのかな。

それに医療にしたって、同じ地域に何組もの支援チームが入って
いたりしたんじゃないかな。支援が手薄になった地域もあったの
では?と感じてしまった。

怪我をしている人はいないか。具合の悪い人はいないか。その場で
すっと医者としての使命感が頭をもたげて来る。医師としての本能
なのだろう。日本の医師たち、みんながそうならいいのだけれど。