何としても生きて還る

ヨルダンの空軍パイロットの件も、嫌な結末になった。
否、これは結末じゃなく始まりか。

復讐の連鎖だよね。やり切れねぇ。

アンデスの奇蹟』(ナンド・パラード/ヴィンス・ラウス 山と
渓谷社)読了。

チャーターしたウルグアイ空軍機はアルゼンチンの空港で天候の
回復を待っていた。乗客はチリで行われる親善試合に出場予定の
ウルグアイラグビー・チームとその関係者。

空港を飛び立った飛行機はアンデス山脈を越えようとして乱気流
に捉えられた。激しく上下する機体。パイロットはどうにか機体
を立て直そうとしたが、雲が切れた先には山の稜線があった。
1972年10月13日。チャーター機アンデス山脈に墜落した。

この事故に関しては映画「生きてこそ」があり、16人の生存者へ
のインタビューを元に書かれた『生存者』がある。本書は16人の
生存者のひとりであり、捜索活動打ち切り後に救助を求めて
アンデスの山々を越えるという超人的な挑戦を成し遂げた
ナンド・パラードが、35年振りに事故を振り返って書かれている。

きっと救助隊が見つけてくれる。心の支えだった希望は、ある日、
偶然受信したラジオのニュースで打ち砕かれる。捜索打ち切り。
ならばどうする。自分たちで救助を求める為に、山を越えようで
はないか。

見渡す限りの雪山。吹雪や雪崩に襲われ、衣服も装備もろくに
揃わないなか、「生きて父の元に帰る」という一念だけが
ナンドを支えていた。そして、墜落事故で命を失わなかった
仲間の命を繋ぐ為に。

救助を待っての山中での日々も相当に辛いが、救助を求めての
山越えの過酷さと言ったらない。

既に体力は衰え、常に飢えと渇きに苛まれ、雪山登山の道具なんて
皆無。これ以上ない思える悪条件のなか、時に死の誘惑に負けそう
になりながらも10日をかけてチリの山小屋へ辿り着く。

もし、自分が同じ状況に置かれたらどうする?ナンドのような
「生」への執念が持てるだろうか。無理だ。絶対に雪に埋もれて
死ぬ方を選んでるよ。

仲間の遺体を食したとのカニバリズムばかりがクローズアップ
される事故だが、同乗していた母と妹を失いながらも生き残り、
故郷へ還ることにあらんかぎりの力を発揮し、極限状態から
脱した生存者たちの執念に脱帽だ。

尚、生存者たちの「その後」も綴られている。