おばあちゃまの思い出話

世の中には言わなくてもいいことを言う人がいるんだよな。
あっちでああ言い、こっちでこう言い。

本人はどう思っているのか知らんが、それが周りをひっかき
回す結果になっているって分かってるのかね。

あ〜あ、巻き込まれたくないわ。面倒臭い。

『ライカでショット! ─私が歩んだ道と時代─』(笹本
恒子 新潮文庫)読了。

日本初の女性報道写真家。今年、100歳を迎える笹本恒子
さん。偶然見ていたテレビで紹介された女性は、現役の
写真家だと言う。

まったく知らなかった。報道写真は好きなのだが、これまで
彼女の作品を目にした記憶がない。

なので、新刊書店で本書を見かけた時に衝動買いした。
知らないはずだ。彼女が画家を目指しながら写真家へ
転身したのは戦前。

60年安保の頃までは写真家として活動したようだが、その後は
服飾関係の仕事へ転身していた。以前に撮影した作品で写真展
を開催したのは写真の世界から離れて随分経った頃だと本書で
知った。

本書は2002年に単行本で出版されたのだが、2014年9月で
著者が100歳になるのを機に改訂されて文庫化された。

カメラの扱い方も知らずに飛び込んだ写真の世界で、右往左往
しながら仕事を続けた頃のエピソードとその時代の雰囲気が
綴られている。

古い言い方になるが、職業婦人の大先輩。勿論、人生の大先輩
でもあるのだが、体当たりでの取材体験が興味深いのは前半だけ。
あとは軽い読み物と言う感じで、かなり肩透かしだった。

著者の撮影になる写真も掲載されている。しかし、私の感性
とシンクロしなかったのか心に響かない。残るものがない。
なんでだろう。日本初の女性報道写真家。この肩書が先入観
になったのがいけなかったのか。

苦労話を期待した訳ではないけれど、全体に薄っぺらい印象
が残った。もっと写真の話が綴られていると思ったのだけれど
なぁ。あ、「やらせ」告白もあるけど、既に遠い昔のお話なので
時効だよね。

彼女の写真作品より、100歳、日本初の女性報道写真家という
言葉が独り歩きしているのかな。私には魅力のない写真だった。