アメリカの世紀の終わりに

ネクスト・センチュリー』(デイビッド・ハルバースタム
TBSブリタニカ)読了。

「だいたい、愛国主義というのはどうやって定義するのか。政府の
行動をすべて盲目的に支持することが愛国的なのか。それとも、
一人一人の国民が、政府の望むところに賛成しようが反対しようが、
祖国のために正しいと思う原理原則にしたがって発言し行動すること
が愛国的なのか。(中略)あの反戦運動をしている人たちも、愛国
主義者かも知れない。少なくとも彼らには、自分たちの祖国愛が
あなたの愛国心と同じように真摯なものだと信じる権利はある筈だ。
そして、その信ずるところを表明する憲法上の権利もある。この
歴史的な国民的議論にあって、彼らの言い分をわれわれが報道した
からといって、それが愛国主義に反することになるとはどういうことだ」

何度も引用しているが、アメリカのニュースキャスター、故ウォルター・
クロンカイトがヴェトナム戦争の際に「報道は愛国的でなければなら
ない」との国防長官の発言に対しての言葉だ。

その、「愛国的でなかった」ヴェトナム戦争報道の一翼を担ったのが
本書の著者である。ヴェトナム戦争を「泥沼」と表現することがある
が、この「泥沼」を最初に使った人でもある。

1991年に日本向けに書かれた本書は「戦争の世紀」「アメリカの世紀」
と言われた20世紀を振り返り、21世紀の課題を考える著作である。

ソ連ゴルバチョフが登場し、ソ連の衛星国だった東欧各国で
民主化運動が連鎖し、冷戦構造が終幕を迎える。だが、アメリカは
それでも2大超大国という幻想にしがみついていたかった。

そうでなればアメリカの存在意義がないからだ。第二次世界大戦
疲れ切ったヨーロッパに取って代わるように経済的発展を遂げ、
西側世界で唯一の強大国となったアメリカ。

政治と軍事がすべてに優先し、繁栄を謳歌する為に国の借金は
膨れ上がっていく。そして気が付けば、自分たちが支配下
置いていたはずの日本が、経済大国としてアメリカを脅かす
存在になっていた。

富裕層と貧困層の格差はますます広がり、今後、スプートニク
並みの大きな金融危機アメリカを襲うかもしれないとの記述
は、まるでリーマンショックを予言したようだ。

アメリカ政治や自動車産業、メディアの興亡でアメリカを大いに
批判して来た著者だが、それはクロンカイトの言うような種類の
愛国心」の発露なのだろうと感じた。

そして、21世紀を迎えたアメリカのあとを追うように、日本も
同じ道を歩んでいやしないかと感じた。

手持ちのハルバースタムの著作も少なくなって来た。事故で亡くなる
ことがなければ、イラク戦争を題材にした作品を書き上げていたこと
だろうに残念。

まだ手にしていない著作を古本屋で探そうっと。