「長いお別れ」との決別

先日、編集の終わった『昭和天皇実録』の一般公開が始まる。
11月30日まで。

う〜ん、きっと希望者多数だよね。やっぱり来春からの出版を
待つか。でも、ちらっとでも見たいな。ひとり1回50分かぁ。
う〜ん…。

ロング・グッドバイのあとで』(瞳みのる 集英社)読了。

ジュリーが画面から語りかけていた。それは多分、一般視聴者
へではなく、見ているとも分からないたったひとりへ向けてだった
のだろう。

そうして歌われた「ロング・グッドバイ」。作詞・岸部一徳沢田研二
作曲・森本太郎NHK「SONGS」で歌われたその歌は、瞳みのる
へのメッセージだった。

ザ・タイガーズ解散後、芸能界ときっぱりと縁を切り音信不通となって
いた瞳みのるの復活を、他のザ・タイガースのメンバーは待っていた。

その瞳みのるが綴った自叙伝が本書である。子供の頃の思い出は
勿論、オリジナル・メンバーとの出会い、東京でのデビューから解散、
その後の生き方の模索。

時系列ではなのと、所々話が飛ぶのが若干読み難い。だが、自分たち
が好きで始めた音楽だったのにザ・タイガースとして人気を集めれば
集めるほど、初めに「やりたい」と思ったことと現実が乖離して行った
のだろうなとは思う。

そしてこの人は、良くも悪くも「こだわり」の人なのだと感じた。解散まで
の1年で1千万円を溜め、それを元手に高校(夜間)からやり直し、一発
で慶応大学に合格している。

本書には記されていないが、ザ・タイガース再結成の為の説得にあの
内田裕也が、当時瞳みのるが教鞭を執っていた慶応高校へ押しかけて
行ったと何かで読んだ記憶がある。

芸能関係者との面会一切お断りだったので、勿論、裕也さんにも合わ
ない。それに激怒した裕也さんが暴れたとか…。

このエピソードも「こだわり」の強さの表れなのだろう。だが、ややもする
とその強さは少々鼻につくことにもなるのだが。

全体的にあまり踏み込んで書かれてはいないとの印象だ。2013年12月
の再結成までもゴタゴタがあったようだから、書けないこともあるんだろう
なぁ。特にトッポこと加橋かつみとジュリーのことなんて。

絶大な人気を誇った芸能人が、その後、如何にして生きる道を見つけた
かを知るにはいい。だが、読みようによっては瞳みのるが大嫌いになる
可能性も秘めた作品だと思う。

私は…ジュリーやサリー(岸部一徳)が「再結成」を実現出来ただけで
満足である。サリーがバイオリン・ベースを弾く姿は、還暦を過ぎても
格好いいのさっ。