日本を愛したスパイ

『アレン・ダレス 原爆・天皇制・終戦をめぐる暗闘』(有馬哲夫
講談社)読了。

登場人物が多過ぎっ!まぁ、扱っている時代が長期に渡って
いるので仕方ないないのだろうが、各章の冒頭に主な登場
人物一覧が出ているけどそれでも覚えきれんわ。

さて、アレン・ダレスである。兄のジョンは外交官に、弟のアレンは
聖職者に。そんな父の思いと裏腹にアレンも外交官となり、のち
にはスパイの親玉・CIA長官になる。

第二次世界大戦の終盤。ナチス・ドイツが崩壊し、残るは日本のみ。
対日終戦工作が始まるなかで、時のアメリカ大統領・トルーマン
対峙し、日本への原子爆弾投下を思いとどまらせようとした代表
格の人物でもある。

結局は原爆投下は実施されちゃうのんだけどね。この原爆投下に
関してはアメリカでも「不要だった」とする意見もあるようだが、当の
トルーマン大統領は生涯、正当性を主張していた。

長崎に原爆が投下された時、アメリカのキリスト教全国評議会が
大統領を非難する電報を送ったのだが、その回答が「けだものを
相手にするときには、相手をけだものとして扱わなければなりません。
残念なことではありますが、しかし、それは真実です」だものな。

あーっ!書いててなんだか腹が立って来たわっ。こんな大統領と
「日本の国体は維持して戦後の対ソ連に備えましょう」と工作活動
していたアレンを始めとする知日派は苦労しただろうな。

第一次世界大戦で初任地となったウィーンでの行動から、第二次
世界大戦ではCIAの前身である戦略事務局のスイス支局長として
活動した時の人脈を活用した対日終戦工作を綿密に追っている。

所々、中だるみする部分もあるが終戦後の日本の主権に配慮
した無条件降伏を打診したアメリカ側に対し、日本側のぐだぐだ
ぷっりが対照的。

ポツダム宣言受諾までの後半は面白い。それはきっとアレンの
全盛期と合致しているからだろうな。戦後のアレンはピッグス湾
事件をはじめとしてへまばっかりだったからな。

本書を読んで気になったのはフリードリヒ・ハックというドイツ人スパイ。
日本海軍の為に動いた人なのだが、この人のことを書いた作品って
あるのかな。探してみよう。