おじいちゃまとしてのワンマン宰相

「日本を取り戻す戦い」ねぇ。安倍晋三は、何と、誰と、戦っているの
だろうか。このフレーズ、聞き飽きたわ。

「経済性優先」も「大企業最優先」にしか聞こえないしな。内閣改造
といっても変わり映えしないメンツだ。何の為の改造?

女性閣僚を増やしても、その人の能力はどうなんだろうね。個人的に
高市早苗センセイのお顔は出来れば拝見したくないのだが…。

小泉ジュニアでも入閣させれば「安部晋三もやるじゃん」と思うけど。
う〜ん、分からん改造だ。取り敢えず陛下に余計な仕事はさせない
ようにお願いしたい。

麻生太郎の原点 祖父・吉田茂の流儀』(麻生太郎 徳間文庫)
読了。

「首相は務まると思いますが、首相秘書官は務まりません」という
言葉は有名か。

吉田茂。そのワンマンぶりもさることながら、戦後の日本の運命を
任された日本を代表する政治家。

寛仁親王妃信子殿下の料理本を読み終わって、そうえば妃殿下の
兄である太郎ちゃん(第92代内閣総理大臣麻生太郎)が書いた
おじいさまの本があったなぁ…と思って引っ張り出して来た。

吉田茂が首相時代の政治の流れも書かれているけれど、やっぱり
読みたいのは「おじいちゃま」としての吉田茂である。

学習院で授業中の太郎ちゃん。「おうちの方がお見えです」と言われ、
行ってみれば首相専用車でおじいちゃまが待っていた。そのまま
寄席に連れて行かれるなんて話が満載。

妻である雪子さんを早くに亡くした為、吉田茂が海外等へファースト
レディ代わりに同伴したのが太郎ちゃんの母上であり、三女の和子
さん。忙しい祖父と一緒に飛び回る母と父。おかげで太郎ちゃんたち
は寂しい思いをする。

サンフランシスコ講和条約帰結の為にアメリカへ出かける前は、父も
母も家にいない。大磯のおじいちゃまの家に行った時、その寂しさが
口を突いて出る。

「おじいちゃまのせいでいつもママは家にいない。今度は、それどこ
か、パパもママも外国に連れていってしまう」

孫たちが可愛くて仕方のないおじいちゃまは「今度、動物園に連れて
いくから」と、孫たちに約束するなんて話は少々じ〜んとする。

バカヤロウ解散とか、カメラマンにコップの水をぶっかけるとか、
曲学阿世の徒」発言とか、とかくその行動や言動が印象的な
人であるけれど、豪快でユニーク、そしてどこか貴族的な吉田
茂像が描かれている。

東日本大震災後の原発事故で当時のバ菅首相が迷走している
時、「あぁ、吉田茂か角さんが生き返ってくれないだろうか」と
何度思ったことか。

こんなユニークな人物、もう出て来ないかもな。あ、太郎ちゃんは
見ている分には面白いよ。政治家としては分からんが。

だって、現役の安倍晋三を含め私が見て来た首相経験者のなか
でモーニング姿が様になるのって太郎ちゃんくらいだもの。

そうえば、アメリカ留学中、「アメリカ英語はいかん。イギリス英語を
覚えなさい」とロンドン大学大学院に無理やり転向させたのも、
おじいちゃまだったのではなかったっけ。

人間味たっぷりのエッセイは孫から見たワンマン宰相の日常が
垣間見れて面白かった。

尚、文庫化に際して「付録」として太郎ちゃんの演説を文字起こし
したものが収録されているのだが、これは余計だったな。素敵な
エッセイを読んだら、余韻に浸りたいもの。