けじめ、つけさせてもらいます

自転車で出かける。信号待ちの間、太陽にあぶられているって気に
なる。あっついなぁ。夏は暑くていいんだけれど、近年は暑過ぎだ。

「それは、アメリカが宇宙に巨大な鏡を設置して日本を焼こうと
しているからです」

いつだったか旦那がそんな馬鹿な話をしていたのだが、こうして
酷暑が続くとなんだか納得しちゃうわなぁ。

せめて、朝晩だけでも涼しければいのに〜。

しんがり 山一證券最後の12人』(清武英利 講談社)読了。

<今回の社内調査報告書が、従来、我が国で多く見られた
結果の公表を伴わない調査、あるいは、自ら行った事実認定
を示さず単に抽象的な「反省」の言葉を並べただけの報告書
であってはならないという決意の下で、目的を達成すべく
調査してきた>

2千6百億円の簿外債務が明るみに出て、明治創業の老舗
証券会社・山一證券が自主廃業に追い込まれたのは1997年。

何故、ここまで巨額の負債が出来てしまったのか。自主廃業
が決まってから山一社内に設けられた調査委員会の最終
報告書の冒頭に記されたのが上記の文章だった。

本書は自社の腐敗の原因を追究する為に、最後まで会社に
残って調査に当たった12人を中心に、消滅する会社のけじめ
をつけた人々の奮闘を描いたノンフィクションである。

「みんな私ら(経営陣)が悪いんです。社員は悪くありません
から」

自主廃業が決まった当時の社長の記者会見は今でも覚えて
いる。あの社長も実は簿外債務については何も知らされて
いなかったのが本書を読んで分かった。

前社長が総会屋への利益供与で退任した際に、「いろいろある
けど頼むよ」と言われた、その「いろいろ」がこの巨額な負債
だった。

そして、大蔵省証券局長から言い渡された自主廃業のすすめ。
これほどの簿外債務がどうして今まで隠されて来たのか。證券
会社の本流から外れた部署、社内では「場末」と呼ばれる部署
に籍を置く社員たちは、債務隠しに係わったと思われる人々に
面談し、徐々にその真相に迫って行く。

中心となった12人の人物描写に関しては若干の美化はある
のだろうが、沈むのが分かっている泥船から次々と人が逃げ
出すなかで自分の会社が抱えた膿を出そう動く人々の根底
にあったのはやはり会社への愛着ではなかっただろうか。

会社は潰れる。給与も出なくなる。それでも何があったのか
をはっきりとさせることが、顧客や株主に対してのけじめの
つけ方だった。

しんがり。自分の会社の最期に決着をつけた人々の「その後」
も書かれており、山一證券廃業の真相が垣間見られる良書。

尚、読んでいる途中で本書が講談社ノンフィクション賞を受賞
したとのニュースがあった。受賞に値する作品だと思う。