大正・昭和のハイパーメディアクリエイター

原告敗訴か。沖縄密約訴訟の最高裁判決である。予想はしてた
けどね。でも、酷くないか?公文書に触れる機会がない側に対して、
「密約文書があるってことを証明しなさい」だって。

日本の外務省は破棄したとか言ってたけど、アメリカの公文書館には
保存されてるのではなかったっけ。

沖縄返還の費用は日本が肩代わりしますよってのは、現在の日米
地位協定と同じじゃ〜ん。

特定秘密保護法案も可決されちゃったし、益々情報公開の範囲が
狭まるよな、これは。

武井武雄 イルフの王様』(イルフ童画館:編 河出書房新社)読了。

専門学校は2年制で単位取得は前期・後期に分かれていた。2年目
の後期、卒業する為の単位は既に取得済みだったが児童文学の
講義を選択した。

その講義の過程で出会ったのが「童画」という言葉だった。恥ずかしながら
子供の頃は児童書とは縁遠かった。なので、「童画」という言葉を作った
武井武雄のこともこの講義で初めて知った。

武井武雄。大正から昭和にかけて活躍した人。絵も描くし、版画も
作るし、デザインもやる。本の装丁は勿論、おもちゃを製作したりと
守備範囲がとても広い。

童画家というだけじゃ物足りない人物。そうだ、どこかの胡散臭い
人と違ってこの人こそハイパーメディアクリエイターなんじゃないか
と思うわ。

その武井武雄のあらゆる仕事をまとめたのが本書。生誕120年を
記念しての出版だそうだ。

もうねぇ、虜ですよ。人間を描かせれば丸に線で手足をつける棒人間
しか描けない絵心皆無の私から見たら、「なんでこんな絵が描けるの
だろう」って思うくらい多彩な仕事振り。

水彩、線画、エッチング木版画、そして凝りに凝った刊本の数々。
ページをめくるたびにうっとりなのである。

価格の問題もあるのだろうが、大型本だったらもっとよかったのに。
それだったら、数々の作品ももっとじっくり見られたのにな。

巻末には書誌目録も収録。益々、イルフの王様にのめり込みそう。
あぁ、長野県岡谷市イルフ童画館へ行きたいっ!

尚、「イルフ」は「古い」を反対から読んで、「新しい」という意味。
今見ても武井武雄の作品は魅力的だ。