「花の首飾り」を編上げるまで

旧ソ連の元外相、シュワルナゼ氏が亡くなった。ゴルバチョフ政権が
掲げたペレストロイカ政策を外交面で支えた人。ソ連崩壊後は
故郷のグルジアの大統領も務めた。

86歳。ご冥福を祈る。合掌。

ザ・タイガース 花の首飾り物語』(瞳みのる 小学館)読了。

後にも先にも、私がファンクラブと言われるものに加入したのは
この人だけ。マルチタレント(でいいのか?)中川翔子の父上、
亡き中川勝彦

20世紀最後の美青年(勝手に言っていた)が、飲料メーカーの
CMタイアップとは言え「花の首飾り」を歌う。そのレコード(古っ)
発売予告のポスターが掲げてあった。

あれは日比谷野外音楽堂でのイベントの時だった。相当に挙動不審
だったであろう私は、会場内の木に括り付けてあったそのポスターを
失敬して来た。あ、窃盗ですね。これって。汗

「花の首飾り」。日本のみならず海外でもカバーされたザ・タイガース
の大ヒット曲だ。GS全盛期は知らないけれど、ジュリー(沢田研二
が好きだったのでさかのぼる形でザ・タイガースの楽曲を知った
世代である。

メインボーカルであったジュリーではなく、トッポ(加橋かつみ)が高音
の澄んだ声で歌うこの楽曲。実は詞が公募であったことを本書で
初めて知った。

私が子供の頃もまだあった月刊芸能誌「明星」誌上でのザ・タイガース
の歌う歌に公募された13万を超える作品の中から選ばれた1作。

ザ・タイガース解散後、40年に渡って芸能界との縁を切って来た
ピーこと瞳みのるが「花の首飾り」のルーツを訪ねる旅を綴った
のが本書である。

原詞者は北海道八雲町在住の19歳の女性。イメージしたのは
バレエ曲「白鳥の湖」なのだそうだ。歌詞の中にも「白鳥(しらとり)」
が出て来るし、楽曲を聴いていると確かに「白鳥の湖」のイメージ
が被るんだよね。

ザ・タイガースのメンバー(岸部四郎を除く)へのこの楽曲に対する
印象や、作曲家すぎやまこういち、原詞に手を入れた作詞家なか
にし礼、ザ・タイガースの楽曲の詞のほとんどを手掛けた作詞家
橋本淳へのインタビューも収録されている。

「明星」誌上での当選作発表の際にも既になかにし礼の手が
入っており、原詞が見つからなかったことが残念かな。元々は
便せん7〜8枚に渡って書かれていたらしい。

芸能界引退後、教師となった著者(中国文学者でもある)だけに
後半は少々小難しい音楽論や文学論も出て来る。本職の物書き
ではないので、若干読ませる文章になっていない部分もあるの
はご愛嬌か。

原詞者に会ってみたいという著者の思いは叶わなかったが、
ひとつの楽曲を考察する作業って、発掘作業みたいで面白
そうだ。

尚、冒頭で記した中川勝彦は慶応高校の出身。それは著者が
教鞭を執っていた高校でもある。後に自分たちのヒット曲を
歌うことになる人物と、同じ時期、同じ空間にいたのは不思議な
縁とでも言うのだろうか。