痛いっ!痛過ぎるっ!

いや〜ん。今年はカメムシが異常発生ですって。どうしよう、うっかり
踏んでしまったら。

虫にだって命があるのは分かってる。でも、あの臭いには耐えられ
ないわぁ。

これも天候がおかしいせいなのかしらね。

『127時間』(アーロン・ラルストン 小学館文庫)読了。

うぅ…痛い。「痛い文学」ってジャンルは存在すると思うんだ。
だって、読んでいるだけで激痛を伴うのだも。

それはあまりにも酷い出来事で「心が痛む」のでも、物語が
破綻していて「頭が痛い」のでもない。身体的な痛みを伴う
作品というのはあるのだと実感する。

それは沢木耕太郎『凍』もそうだし、本書も同じジャンルに
加えたいくらいに痛い。否、痛過ぎるかもしれない。

著者はアウトドア好きの青年である。休日に砂漠の渓谷へ
出かけ、ロッククライミング中に悲劇に襲われる。

不安定な岩から飛び降りる際に、その岩塊と共に滑落する。
それだけならよかった。落下した岩塊は著者の右手を岩壁
との間に挟んでびくともしない。

イカーも少ない渓谷の奈落。誰かが偶然に発見してくれる
可能性は皆無に等しい。手元にあるのはわずかな水と食料。
それが尽きてしまえば、自然と死を迎えるしかない。

岩塊を砕いて挟まれた右手を引き出そうとするも、持っていた
マルチツールの刃渡りの短いナイフと金やすりでは成果が
上がらない。

右腕の切断にも挑戦するも、岩を削ってなまくらになったナイフ
では僅かな傷をつけることしか出来ない。

座ることも横になることも出来ない姿勢では、睡眠を摂ることも
出来ず、クライミングの道具を工夫して足の負担を減らすのが
やっとだ。

昼間こそ太陽の光を受けることが出来るものの、砂漠の夜の
寒さは低体温症を引き起こす恐れもある。

頭上を飛ぶカラスと、時折襲ってくる蚊以外にはまったくの
孤独。その孤独と死への恐怖。加えて、衰えていく体力が
著者の意識を混濁させ、時に譫妄の世界へ誘う。

このままここで、孤独に死んでなるものか。そうして、決断の
時がやって来る。挟まれた右腕を…。

ギャー。こうやって思い出して書いているだけで自分の右腕が
目茶目茶痛いんですけど。

絶望的な状況にありながら、客観的に自分の置かれた状況を
分析し、万一、このまま死を迎えることを考えてビデオカメラ
に遭難の状況を残すなんて。

自分だったら絶対に出来ないわ。絶望してそのまま死んでる
と思う。

しかもこれが実話なんだよね。そして、渓谷からの生還後、
著者は再びアウトドア・ライフを楽しんでいる。

原書のせいなのか、訳文のせいなのか。少々読み難いのが
玉に瑕。

尚、この作品は若干の変更を加えて映画化されている。私は
映画を先に観ているので、最初のアクシデントシーンが分かり
やすかった。文章だといまひとつピンと来ないところもあるん
だよね。

なので、「映画は観たけど原作は読んでいなかった」シリーズ
であ〜る。それにしても…イタイ。