浮かび上がる過去の切なさ

「クリミアが遂にロシアへ帰って来た」

プーチン閣下がクリミア編入宣言をしちゃったよ。あ〜あ、どう
すんだ?本当にウクライナは分裂してしまうの?

大体、ボルシチだって、ピロシキだって、ルパシカだって、
元々はウクライナ起源のものじゃないか。

これって、新たなる冷戦の幕開けだろうなぁ。ロシアはウクライナ
に対して以前のように「ガスの供給、止めるぞ」と揺さぶっている
ようだ。

むか〜し、スターリンウクライナ民族を根絶させる為に、人為的に
大飢饉を起こした。そんなことを思い出しちゃったよ。うぅ…。

『花ならアザミ』(志水辰夫 講談社文庫)読了。

世話になっている古書店にかかって来た1本の電話。電話の主は
25年前、この古書店をひいきにしていたという。

関東に戻って来た。実は蔵書を処分したい。ついては昔馴染み
の店に頼みたい。そんな依頼を受けて湯原直子は指定された
横浜市内の住宅へ足を運ぶ。

生憎、老齢の店主は体調を崩して入院中だ。蔵書リストだけを
受け取るつもりだった直子の前に差し出されたのは1冊の本。

預かったのは稀覯本。しかし、それはとある場所からの盗品
だった。ことの真相を確かめる為、再度、横浜に向かった直子
だったが、訪問したはずの住宅はもぬけの殻。何もかもが
直子を迎える為のトリックだった。

そうして、元の持ち主の元に手紙が届く。直子に渡した本以外
にもあなたの蔵書がこちらにある。買い戻す気があるのなら、
幾ばくかの現金と交換だ。

誰が、何の為に仕組んだトリックなのか。物語が進むうちに
隠されていた過去の出来事の真相が浮かび上がって来る。

最近は時代小説の多い著者だけれど、『行きずりの街』や
『背いて故郷』等のハードボイルドな作品が好きだった。

「過去のキズ」がテーマになる作品が多い著者なので、本書
もそうなのだが女性が主人公であるのが異色かな。

謎解きと愛憎劇が展開されて、終幕へ向かうのだがすべての
謎が明らかになっても誰も憎めない。それぞれが背負った
哀しさが余韻として残る。

やっぱりいいなぁ、シミタツ。他の作品を再読しようかなぁ。