不倫は文化だっ‼の時代

『文士と姦通』(川西政明 集英社新書)読了。

作品は好きだが、作家その人自身が好きになれない時がある。
私の場合、谷潤こと、谷崎潤一郎がその代表だ。

何故か。佐藤春夫への妻譲渡事件があるからだ。なんだよ、
自分の奥さんを他人に譲り渡すって。しかも理由が、奥さんの
妹に惚れたからだって。

美しく哀しい『春琴抄』を書いた人は、淫靡で妖しい『痴人の愛
を書いた人と一緒なんだよな。

妻がいながら、夫がいながら、他の異性と関係を持つ。そんな
文士たちの私生活を覗き見るのが本書である。

ほとんどが男性作家なのだが、女性作家も3人が取り上げられ
ている。でも、やっぱり男目線の解釈なんだよな。

だって、だって。島崎藤村なんて姪に手を出して、その姪の
妊娠が判明するとパリに逃走してるのよ。

著者は渡仏した先で苦労した…みたいに書いているけれど、
姪のこま子さんなんて、帰国した藤村に再度関係を迫られ、
最後は行き倒れ。

貧困のなかで妻や子を次々に亡くし、生き残った藤村の子供
たちの面倒を見た人に何をするのさ。キーーーッ。

「落ち着け、自分」と言い聞かせながら読みましたよ。著者は
そんな不倫関係が作品を書く原動力になっていると解釈して
いる。まぁ、私小説が全盛の時代にはそうだろうな。

でも、やっぱり男の身勝手なんだ。本書で取り上げられている
女性作家だって、岡本かの子を除けば元々の原因を作った
のは旦那だしな。

興味深い切り口ではある。でも、女の目線で読んだからなんだ
ろうけれど、谷潤と藤村は嫌い度が上昇しました。