変わりゆく組織へのレクイエム

『鎮魂 さらば、愛しの山口組』(盛力健児 元山口組盛力会
会長 宝島社)読了。

義理・人情を重んじる熱い男。東映やくざ映画
出て来そうな、そんな本物の極道の生き残りが本書の
盛力健児氏かもしれない。

日本最大級の暴力団組織である山口組。その三代目
田岡組長の時代から現在の六代目司組長まで、四代
の組長を見て来た人だ。

やくざの本にこう言ったら語弊があるかもしれぬが、
文句なく面白い。それは、インタビュアーである西岡
研介氏の手腕もあるのだろう。盛力氏の語り口を
生かした文章は臨場感があり、所々で補足があるの
で事実関係が分かりやすい。

三代目田岡組長が狙撃されたベラミ事件。その報復を
買って出たのが盛力氏だ。

第二山口組…じゃなかった。大阪府警はこの機会に
三代目の若頭・山健組組長・山本健一までに逮捕の
手を伸ばしたい。だが、「俺で止める」と断言した言葉
通りに盛力氏は取り調べ室で舌を噛み切る大芝居まで
打って、自分の親父を売ることはしなかった。

すげぇ。今、ここまで出来るやくざっているんだろうか。
そうして食らった懲役16年。出所した時には自分より
格下だった渡辺芳則が五代目の座に就いていた。

盛力氏が語る、五代目渡辺組長の実像が興味深い。
結局、6代目司組長によるクーデターで引退に追い
込まれる原因って身から出た錆だったんだなぁ。

他にも宅見勝暗殺事件の真相などもあって、当時の報道
だけでは分からない話が盛りだくさん。

最後の、極道らしい極道は6代目から除籍処分にされて
潔く引退。親分の為に生きた人は、今は、堅気の生活を
送っている。