ポロポロとうろこが落ちる

見逃していた。アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」を、
中国の企業家が買収しようとしていた。

一部では「単なる売名行為」と言われているようだが、本気なんだ
ろうか。断念してくれないだろうか。

アメリカでも新聞各社は経営が厳しいようだ。でも、それにしたって
報道の自由さえない中国の企業家とはなぁ。

大好きなハルバースタムが在籍した「ニューヨーク・タイムズ」。
報道記事もだけれど、数々の名コラムを生んだ「ニューヨーク・タイムズ」。

今少し、そのままでいてくれないかな。

『性と柔 女子柔道史から問う』(溝口紀子 河出ブックス)読了。

日本のお家芸と言われる柔道。観戦するのは大好きだ。オリンピック
ともなれば、放送が観られなくても試合結果のチェックは怠らない。

その柔道の世界から次々と不祥事が発覚したのが2013年だった。
1月に女子柔道の強化選手15名による、監督をはじめとした指導
陣の暴力行為やパワハラの告発がきっかけだった。

その後、補助金の不正使用、役員のセクハラ等も発覚し、全柔連
は自浄作用を試された。

テレビのコメンテーターとして、告発した女子選手たちを擁護し、
全柔連の男社会の構造を批判していたのが本書の著者でも
ある溝口紀子氏だ。

一連の不祥事については本書の第4章で詳細に触れられている。
組織としての全柔連への批判もさることながら、自身の行動を
振り返っての反省点も記されている。

競技としての柔道はテレビ中継等で知ってはいたが、日本の
柔道がいかにして現在の姿となったかを、多くの文献を参照
して詳細に追っている。

柔道=講道館と考えていたのだが、講道館の元々は町道
に過ぎず、他にも多くの流派があったこと等、目からうろこの
話ばかりだった。

ひとつの競技の歴史としても勉強になる。テレビで見ている
だけでは気が付かなかったのだが、女子選手の黒帯の話
はいささか衝撃的だった。

国際試合では男子と同じ黒帯だが、日本国内の試合では
女子は白線の入った黒帯を使用している。

この黒帯の話をはじめ、女子柔道が晒されて来た性差別も
歴史をひも解き、海外での柔道と比較して分かりやすく解説
している。

まだオリンピックの正式競技になる前、女子柔道の山口香さんが
格好良かった。今でも女子柔道と言えば、この人の名前が真っ先
に頭に浮かぶ。

その山口香さんも、数々の差別とも闘って来たのだな。

多分、柔道界だけではなくどのスポーツでも女性蔑視は
あるのだと思うし、勝利至上主義も柔道界だけのもの
ではない。そして、観戦する側も常に「金メダル」を期待する
ことをやめなくてはいけないのでは?とも思った。