赤狩りに屈しなかったグラディエーター

「百条委員会を開催するぞ」「では、辞めます」。という訳で、猪瀬
直樹東京都知事が辞任である。

「政治家は説明責任を果たし、国民の信頼を得る」とは猪瀬辞任を
受け手の安倍ちゃんの言葉。

ふ〜〜〜ん。自分のことは棚上げ?安倍家にはよっぽど高い棚が
あるんだろうな。

『「ローマの休日」を仕掛けた男 不屈の映画人ダルトン・トランボ
(ピーター・ハンソン 中央公論新社)読了。

第二次世界大戦後、アメリカに吹き荒れた赤狩りはハリウッドにも
及び、非米活動委員会は共産主義者との疑いを掛けられた映画
関係者を証言の為に召喚した。

召喚された本人は勿論のこと、この証言では仲間を売ることを奨励
された。そんな委員会に反旗を翻した人々がいる。

ハリウッド・テンと呼ばれる人々だ。そのなかのひとりが、本書で
扱われている脚本家ダルトン・トランボ

アメリ憲法第一修正条項「議会は言論の自由や平和的な集会
を制約するいかなる法律をつくる権利も有さない」を盾に取り、
証言を拒んだことで映画界から追放される。

だが、トランボはそんな理不尽な扱いに屈しない。偽名を使い、
時には替え玉を使い、脚本を書きまくる。

その脚本の増産は経済的な理由からでもあったのだが、どれだけ
の映画がトランボの作品であるのか。すべては明確になっていない
そうだ。

本書はトランボの脚本作品を、公開年代順に並べて脚本の内容
から彼の思想の変遷を追っている。

映画は好きだけれど、脚本家までは気にしていなかった。結構、
観てるんだな、トランボ作品。ハリウッド復帰のきっかけとなった
「黒い牡牛」、「スパルタカス」に「パピヨン」、「栄光への脱出
「ジョニーは戦場へ行った」等々。

なかでも近年になって実はトランボが脚本を書いたことが分かった
ローマの休日」。ひたすらオードリー・ヘップバーンの可愛さを見る
映画だけれど、これも本書で脚本を分析している。

トランボが描いた世界の底流にあるのは名誉であり、反逆であり、
誇りである。それを映画の中の台詞から読み解いて行く本書は、
映画関連の作品の中でも珍しい内容だ。

こういう映画の見方もあるんだね。勉強になったよ。

権力に屈しなかった剣闘士(グラディエーター)は、風呂おけに
つかってペンを武器に密かに闘いを続けていたんだ。