あの悲劇は防げたのかもしれない

ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言 下』(フィリップ・
シノン 文藝春秋)読了。

ケネディ大統領が暗殺されたダラスの悲劇。それは偶然の重なり
が犯行を可能にした事件だったのか。

上巻同様、下巻でもウォーレン委員会の若き調査員たちの奮闘
が綿密に綴られている。

FBIやCIA、シークレットサービス、ダラス警察から提出された資料を
読み込み、実地検分をし、関係者の宣誓証言を取り、矛盾する点は
ないか、見落としていることはないか。彼らは家族と共に過ごす時間
を削ってまで委員会の為に働く。

真相を見極めようをする彼ら調査員と対照的なのが委員たちである。
委員長の最高裁首席判事ウォーレンはケネディ家を気遣うあまり、
未亡人であるジャクリーンの宣誓証言を取る気はなかった。

結局は自らジャクリーンの元に出向き、証言を取るのだが時間に
してわずか9分の証言だ。

上院議員であったフォードは委員会の為よりも、FBI長官であった
フーヴァーが彼の組織に不利にならぬように働きかける。

暗殺された大統領の弟であり、ケネディ政権の司法長官だった
ロバート・ケネディは最後まで委員会の宣誓証言を拒み、兄の
死に関することについては発言を控えている。

誰もが疲れていた。そして、ウォーレンは早々に委員会を終わらせ
たかった。そうしてまとめられた報告書は、最後の最後で委員たち
の思惑を盛り込み、公開されると陰謀論者の格好の標的された。

暗殺事件を調べ上げた若手法律家たちのバイタリティに感服する。
小さなことにこだわり追跡をする法律家もいれば、委員たちの
決定に不満を持つ法律家はウォーレンにさえ食って掛かる。

本書は報告書が公開されたその後も追っている。CAIとFBIが
委員会に隠していた事実が非常に興味深い。もしかすると
容疑者とされたオズワルドは、犯行こそ単独であったものの
裏には何かがあったのではないかと思わせる。

ダラスの悲劇が起こる前にCIAとFBIがやるべきことをしていた
のなら、ケネディ大統領の暗殺は防げたのかもしれない。そんな
印象を持った。

11月22日。あの悲劇から50年。そして、日本には遺児である
キャロライン・ケネディ氏が駐日大使として着任した。