時間がない
出火時、彼は寮にいた。
1966年6月30日。静岡県で発生した強盗放火殺人事件で死刑判決を
受けた袴田巌死刑囚に、新たな証言が出て来た。
いや、新しい証拠と言うのは語弊があるか。今年になって静岡地検が
開示した証拠のなかから、当時の同僚の目撃証言が出て来たのだ。
なんてことだ。彼は事件発生当時は寮で寝ていたと証言しているのに、
袴田死刑囚を目撃した人間がいなかったというのが死刑確定の要因
ではなかったか。
元々、冤罪の疑いが強い事件だ。犯行時に袴田死刑囚が身に着けて
いたと言われるズボンは、彼には小さ過ぎて太ももまで上げるのが
やっとだったはず。
30歳で逮捕され、45年以上も獄中にいる。ギネス世界記録だという。
こんな記録、日本の司法の恥だと思うのだけれどね。
これで第二次再審請求が棄却されたら、この国の司法は恥の上塗り
をすることになる。
ただ、長い拘禁生活で弁護団とのコミュニケーションも困難になっている
との報道もあった。
冤罪らしい。でも、判決を覆すのは嫌。しかし、刑を執行した後に何か
まずいことが出て来るかもしれない。だったら、執行は先延ばしにして
病死するのを待とう。
そんな風に考えているとしか思えない。77歳の死刑囚に、残された
時間は少ない。そして、塀の中で過ごした時間は返って来ないのだ。
引き続き『ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言 下』(フィリップ・
シノン 文藝春秋)を読む。
後に大統領になる人間をこう言うのもなんだが…。フォードっていけ好かないっ。