提灯本はこうやって書く

現在、派遣先はギリギリの人数でシフトを回している状態。
勿論、これじゃ綱渡りなので募集はしている。そして、人も
来る。

でも、研修期間中に辞めてしまう。問題ははっきりしている。
今のままじゃ来る人、来る人、辞めてしまうだろうな…と感じる。

うーん、どうするんだろう。まぁ、私はその日、その日の仕事を
こなしていくしかないんだけどね。はぁ…。

『悪名の棺 笹川良一伝』(工藤美代子 幻冬舎文庫)読了。

「戸締り用心 火の用心」「一日一善」「人類みな兄弟」。子供の頃に
テレビCMで見掛けた人は、年齢の割には目の力が強くて少々
怖かった。

それが笹川良一という人であり、右翼のドンとも呼ばれた人物だと
知ったのは後年である。

戦前は右翼団体を率い、戦後は自ら望んで巣鴨拘置所へ収監され、
出獄後は戦犯とその家族の救済に奔走し、社会福祉事業にも尽力
した人。

一体、どんな人なのか。メディアが彼への批判をタブー視したのは
何故か。いろんなことが知りたかったのだけれど、本書はまったく
参考にならない。

これは評伝と呼んでいけない作品だ。著者は余程、笹川良一
持ち上げたいようで客観性は皆無。笹川の活動の資金源さえ
「株や先物取引でもうけた」という記述だけで済ませている。

中国関係の人脈についてもほぼ触れていない。詳細に綴られて
いるのは女性関係だけだ。読む方が飽きるほどに、付き合いを
深めた女性たちへの手紙を載せる必要なんかないぞ。

確かに高齢になっても女性関係はおさかんなようだが、そんな
ことはどうでもいいのだ。昭和の黒幕と言われた笹川の、私生活
ではない部分が知りたいのだ。

もう呆れちゃうね。言うに事欠いて、スーパーの経営で儲けた
金と、モーターボート・レースで儲けた金に違いはないと書いて
しまうのだから。

これは社員にサービス残業させて収益を上げても、税金を払って
いれば問題ないと言ったブラック企業の経営者と一緒だ。

なんて見事な提灯本だろう。同じ著者が近衛文麿を描いた
『われ巣鴨に出頭せず』も推測が多くて引っかかりながら読んだが、
それ以上に悪い方へ進化しちゃってるよ。

もう評伝からは手を引いた方がいいんじゃないか。