最後の最後ににんまり

政府などの主催で行われる水俣病の犠牲になった方々の追悼行事が
明日行われる。でも、石原環境相は欠席だって。

公式行事じゃないからというのが環境省の見解だって。ふ〜ん、そう
ですか。国が見殺しにした人たちなのにね。

ケンブリッジ・シックス』(チャールズ・カミング ハヤカワ文庫)読了。

キム・フィルビー、アンソニーブランド、ガイ・バージェス、ドナルド・
マクリーン、ジョン・ケアンクロス。イギリスの名門・ケンブリッジ
大学に在籍した5人は、卒業後、外務省やMI5などに職を得た。

イギリス政府の為に働くのは表の顔。実は大学在学中にソ連
情報機関にリクルートされ、祖国とその同盟国の情報をソ連
流していた。

1950年代に彼らのスパイ活動が露見すると、イギリスには大きな
衝撃が走った。と、ここまでは実際にあった出来事。

後に「ケンブリッジ・ファイブ」と呼ばれるようになる5人に劣らぬ
スパイ活動をしていた第6の男がいたというのが本書の導入部。

主人公は財政厳しい歴史学者のギャディス。ロシア東欧の専門家
だ。本を書いて一発当てないと、別れた妻とスペインに住む娘の
学費も払えなくなる。税金も滞納しているし、さぁ、どうしたものか。

そんなギャディスに持ち込まれたのが親友である女性ジャーナリスト、
シャーロットからの共同執筆の提案。第6の男の話を書いてみないか?

ギャディスにとっては渡りに船。だが、彼女は直後に急死してしまう。
ひとりで調査を試みることになったギャディスだが、生前にシャーロット
が第6の男の件で接触した情報提供者や、何かしらの情報を持って
いると思われる人物が次々と死んで行く。

そして、第6の男の存在を探るうち、厳重に封印されたロシア大統領
の秘密に辿り着き、自身の命どころか愛娘の命さえ脅かされそうに
なる。世界が引っくり返るような秘密とはなんなのか。

という訳で、途中から第6の男からロシア大統領の秘密に主題が
切り替わってしまうのだが、最後の2ページでにんまりしちゃった。

展開が早く、ギャディスがどうなるのか気になって物語に引き込まれ
る。ただ、ころころと話の視点が変わるので混乱したこともしばしば。

そして、本書に出て来るロシア大統領がまるっきりプーチン閣下なの
である。KGBの出身、批判的なジャーナリストの暗殺、強いロシアの
再建。本書では「プラトフ」という名前なのだが、「プーチン」に置き換え
て読んでしまった。

スパイ小説と呼ぶには主人公がスパイじゃないので少々苦しいが、
スパイ絡みのサスペンスならいいかも。

あ、ロシア大統領の最大の秘密と言っても、プーチン閣下が暗殺を
指示した証拠ではありません。念の為。

フォーサイスやル・カレには及ばないけれど、それなりに楽しめた。
映画にしたら面白んじゃないかな。