疫病神・貧乏神と共に過ごして

常に言っていることがおかしいので多少のことなら「またか」と
思うのだが、今回はパソコン画面に表示された短い文章を
何度も読み返してしまった。

「(党の処分決定は)原子力ムラが画策した」

……。誰が、バ菅直人を医者に見せた方がいいぞ。

東海村・村長の「脱原発」論』(村上達也/神保哲生 集英社新書
読了。

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、想定外という言い訳が
使われる大津波によって福島第一原子力発電所が全交流電源喪失
で深刻な状態に陥った。

同じ時、茨城県東海村の東海第二原子力発電所でもあわやという
事態になっていった。これは本書を読むまで知らなかった。

福島第一原発の事故だけでも政府の対応は後手後手に回った。
時を同じくして東海第二で同様の事故が起きていたらと思うと
ぞっとする。

原子力の平和利用とのお題目の下、政治主導で始まった日本の
原子力発電所計画。日本初の原子力の火は、ここ東海村で灯さ
れた。

その東海村の村長を務めた村上達也氏(2013年9月、任期満了に
伴い引退)が、脱原発論を語っているのが本書である。

元々は原発容認派であった村上氏だったが、1999年に発生した
JCO臨界事故を契機に脱原発へと舵を切った。

原発は安全である。事故など起こるはずがない。だから、事故を
想定した対策などいらない。しかし、起こらないはずの臨界事故
は起きた。事故当時、国や県の判断を待たず、自身の首をかけ
て村民の避難を決断した村上氏の脱原発論は読み手にも理解
しやすい。

そもそも日本の原発建設は核のゴミの最終処分方法さえ決めずに
始まった。しかも4枚のプレートが重なり合い、地震大国である国
に次々と54基もの原発が誕生したこと自体が異常だ。

原発は財政的にも苦しい過疎地の自治体に金にものを言わせて
建設された。原発は巨額の金を運んでくる。だから立地自治体は
原発依存になり、次々と新たな原発建設を受け入れる。

このあたりの話は辛辣でもある。原発を受け入れたとしても、他の
産業を育てないと原発で深刻な事故が起こった際に、自治体は
立ちいかなくなる。

非常にまっとうな脱原発論である。脱原発を掲げる人は多くいるが、
村上氏ほど具体的に語った人はいなかったように思う。

先日、小泉純一郎元首相が講演で脱原発を語った記事を読んだ
が、本書とシンクロする部分が多くあり、小泉氏は本書を読んで
いるのではないかと感じた。

尚、福島第一原発事故について村上氏は3つの事故調がすべて
終わってしまっており、建屋の解体も始まっていることについて
危惧している。これでは本当の事故原因の究明は出来ないと。

ああ、そうなんだよな。これ、盲点だったよな。