スパイの正体
我が旦那はモスクワ生まれのモスクワ育ちのロシア人である。
映画や小説の影響で、私は昔からロシア人は皆スパイだと
思っている。我が旦那も例外ではない。
普段は都内に通勤するサラリーマンを装っているが、実は
スパイではないのかと今も疑っている。
そのスパイが今日は朝から騒がしい。いつもは私より遅く家を
出て行くのに、今日は成田空港へ人を迎えに行く為にバタバタ
している。
本国からスパイの偉い人でも来るんだろうか。そんな妄想を
しながら朝食後の洗い物をしていたら、背後から声がかかった。
「ネクタイはどちらがいいでしょう」
振り返った視線の先にはスーツに着替えた旦那の姿。手には2本の
鮮やかな黄色と青のネクタイ。
いや、ネクタイはどっちでもいいよ。でも、でも、黒のスーツに黒の
ワイシャツでその鮮やかな色のネクタイか。まるで、マフィアなんで
すけど。
あ…もしかして私の認識違いか。我が旦那はスパイではなくて、
ロシアン・マフィアだったのか。うわっ!衝撃の事実。
どうせならボルサリーノ帽もかぶって行こうよ。外遊する麻生太郎に
匹敵するマフィア・スタイルだわ。
そうやって私がぎゃぁぎゃぁ騒いでいたら、ワイシャツだけ白に着替えて
出かけて行った。ちぇ…つまんないの。
『東海村・村長の「脱原発」論』(村上達也/神保哲生 集英社新書)を
読み始める。
日本初の原子力発電所を擁し、日本初の臨界事故を経験した茨城県
東海村。東日本大震災当日、東海第二原子力発電所も、大半の電源
を喪失していた。