株式至上主義がやって来る

嘘だろう。今度は坂東三津五郎膵臓腫瘍で明治座での九月大歌舞伎
の公演を降板だ。

治るんでしょうね?治るよね?きっと治るよね?三津五郎まで奪われちゃ
堪らんぞ。

勘三郎さん、仲良しなんだから「まだこっちへ来るな」って言ってやって
下さい。

うわぁぁぁん。本当、頼みます。治して下さいな。

『(株)貧困大国アメリカ』(堤未果 岩波新書)読了。

著者のシリーズ完結編なのだが、三部作のうち二作目を読んでいない
ことに気が付いた。完結篇の本書を先に読んでしまったわ。

1%の富裕層と99%の貧困層。その本家本元が唯一の超大国である
アメリカ。本書では食をはじめ、アメリカの政治までもが一握りの大
企業に左右されている現実を抉り出して行く。

怖いのは食だ。工業化された農場が家族経営の中小農家を駆逐し、
家畜はまさに工業生産品と同じ。身動きも出来ない畜舎に詰め込まれ、
抗生物質と成長ホルモンを投与され、次々に出荷されて行く。

日本ではスナック菓子の包装にも原材料欄に「遺伝子組み換えでは
ない」と表示されているが、アメリカでは遺伝子組み換え食品の表示
義務がない。

人体にどんな影響があるか不明な遺伝子組み換え食品だが、科学
雑誌にその危険性を指摘する論文を書こうものなら様々な攻撃に
晒される。

そして、餌食にされたのが戦争後のイラクの農業だ。戦後の復興支
援の名の下、無償提供されたのは遺伝子組み換え小麦の種子だ。

食ばかりではない。教育も、公共サービスも、大企業にとっては
投資先に他ならない。利益が生み出されるとなれば、なんにでも
手を出し、自分たちに都合のいい法案を提出させる為には多額の
政治献金を行う。

そうして利益が見込めなくなれば、他へと移って行く。置き去りにされる
のは誰か。言うまでもない。一般市民である。

現在、日本が推し進めようとしているTPP参加。関税撤廃を主軸に
工業vs農業の面でばかり語られがちだが、ちょっと考えてみて欲しい。

アメリカから大量に安価な農作物や食肉が入って来る分、食の安全
も脅かされるということを。自由化、効率化を進めたおかげで、国内
の市場は頭打ちだ。だからアメリカとしては海外に市場を求めたい。
それがTPPの正体じゃないのか。

成長戦略、規制緩和。自由化。民営化。口当たりのいい言葉ばかりが
並ぶが、それは誰の為のものなのか。庶民の為ではないのは確かだ。

思い出すのは小泉政権だ。製造業への派遣労働を解禁した結果が、不
況時の大量派遣切りではなかったか。

これは対岸の火事ではない。TPPなんか参加しなくたっていい。日本は
ガラパゴスでも構わない。ここはアメリカの準州ではないのだから。