不条理の中で生きる人々

ダダ漏れである。福島第一原発で、またまた汚染水漏れだ。
今度は過去最悪の300t。そして原因は不明。

もう駄目だろう、東電。次から次へと対策を立てる間もなく、
新たな問題が出ている。

どっかにいないの〜。こういうことの専門家って。はぁ…。

『ぼくの村は戦場だった。』(山本美香 マガジンハウス)読了。

アフガニスタンウガンダチェチェンコソボイラク。日本では
あまりに情報が少ない世界の紛争地を取材したルポルタージュ

タリバンの圧政の下、学ぶことさえも奪われたアフガニスタン
女性たち。密かに集まって、大学生だった女性が先生役となり
勉強を続ける。

著者が亡くなって以降、何度かテレビ番組でこの時の取材映像
が流された。命の危険を承知で、著者が回すビデオ・カメラに
顔を晒した女性たち。

この映像が、山本美香というジャーナリストを象徴しているのでは
ないか。女性だからこそ、弱いものへ向けられた視線があったから
こそ出来た取材だったのだろう。

密告者だと疑われ、唇や耳を削がれたウガンダの女性たち。
誘拐され、子供兵として訓練された少年や少女の心に宿った
闇。

封鎖されたグロズヌイ。爆撃で廃墟のようになった建物で、肩を
寄せ合って暮らす子供たち。

セルビア人とアルバニア人が、うまく付き合っていたコソボでは
復讐の連鎖が止まらない。もう、民族の違う隣人は信用出来ない。

フセイン政権からの解放者だった米軍は、イラクの普通の人々に
とってはフセインに代わる圧政者でしかなかった。国際問題に
発展してもおかしくない、米兵たちの悪行三昧は黙認されたも
同然だ。

戦争・紛争という不条理。その影響をもろにかぶるのは市井の
人々だ。日本とは政治的に繋がりの希薄な地域だが、私たちが
当たり前だと思っている「普通の暮らし」から程遠い生活を強い
られている人々がいる。

「戦争は、どちら側が正当か私には分からない。でも、ひとつ
だけ分かっていることがあるわ。私たちが犠牲者だってことよ」

チェチェンで雑貨を商っていた老婆の言葉は、すべてを言い表して
いるのではないか。

ジャーナリスト・山本美香。2012年8月20日、内戦の続くシリアを
取材中に政府軍の銃撃により死亡。

彼女の死が伝えられた時、呆然とした。そして、今は彼女を失った
ことが悔しい。まだまだ彼女に伝えて欲しいことがあったのに。