温かく、ほろ苦い4年間

まずは「琉球新報」の次の記事を。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-209070-storytopic-126.html

最後の2行が淡々としていいな。この男は「調べる」とか「確かめる」
ということをしないのだろうか。

どんな本を読んで、どんな研究者の説を聞いて、あの歴史認識
(あるかどうか知らんが)が出来上がったのか。聞いてみたい
もんだわ。

『父と息子のフィルム・クラブ』(デヴィッド・ギルモア 新潮社)
読了。

「学校に行きたくないっ!」。ある日突然、自分の子供がそんな
ことを言い始めたら、親はどうしたらいいのだろうか。

著者はカナダ在住の映画批評家。前妻との間にもうけた15歳の
息子・ジェシーを引き取り、再婚した妻と3人で暮らしている。

学校の成績が徐々に失速して行くジェシー。ある日、ラテン語
宿題を見ている時に、父は気が付いた。この子は学校へ行きたく
なのじゃないか?

「仮に学校がいやになったとしても、いんだよ」

ジェシーは迷うことなく学校へ行かないことを決断する。そんな息子
に父は言う。家賃も払わなくていい、働かなくてもいい。でも、麻薬
には絶対に手を出さないこと。そうして、週に3本、一緒に映画を
観ること。

父は映画に関する蘊蓄を語り、自ら選んだ映画を息子と一緒に
観る。映画という「道具」を通して、父と息子は語り合う。

何も映画のことばかりではない。思春期の少年らしい、ガール
フレンドに対する悩みを打ち明けた時には、父は自分の経験に
照らし合わせて息子に助言を与える。それも、息子の気持ち
を出来る限り尊重しながら。

息子が怪しいアルバイトを始めれば心配し、友達と一緒に音楽
を始めれば息子に見つからないよう出演するクラブへ行って
みたり。

時には息子に説教することで、反撃を食らうのではないかと
びくびくしながら接してみたり。息子も息子で、父親に本気で
怒られるのではないかと、様子を探ってみたり。お互いが
お互いを気遣ったりするんだよね。なんて、仲のいい親子
なんだろう。

でも、息子が約束を破ってドラッグに手を出した時には厳しい
父親の顔を見せるんだ。

少年から大人への階段を登る時期、ジェシーも徐々に父と
映画を観る機械が減る。そして自分から父に告げる。学校へ
戻りたい…と。

これは親子の成長の物語だ。ドロップ・アウトした息子を見守る
父(勿論、前妻や後妻の存在も助けになる)も、息子の成長と
共に子離れして行く。

反発もあるし、すれ違いもある。世代のギャップも勿論ある。
だが、父と息子のフィルム・クラブは温かくて、ほろ苦い
4年間の記録だ。読んでいるこちらも、ジェシーの成長が
微笑ましくなる。